ビューティ

国産CBDブランド「ワララ」 合法大麻ビジネスは日本でも浸透するのか

 新型コロナウイルスによるパンデミックは、ウェルネス市場の拡大を後押ししている。中でも注目を集めているのがCBD含有製品だ。CBDとは、大麻草に含まれる成分カンナビジオールの略称で、ストレスの緩和や不安の軽減や精神疾患などに有効と言われている。依存性や精神活性作用のあるTHC(テトラヒドロカンナビノール)とは異なり、CBDの安全性と有効性については世界保健機関(WHO)も認めている。CBD関連のビジネスは“グリーンラッシュ”と呼ばれ、主に米国で驚異的なスピードで成長を続けている。米国調査会社ジェネシス・マーケット・インサイツ(Genesis Market Insights)のデータによれば、2017年約1兆9000億円だった世界のCBD市場が、23年には約6兆6000億円に伸びると予想されている。

 日本では大麻取締法でTHCは違法だが、CBDは茎と種子由来であれば違法ではない。日本に進出する外資系企業も増えており、小売店でCBDを含むオイルの販売や、エステやヘアサロンでCBD含有製品を使ったメニューが取り入れられ始めている。「実際のところ、法的にグレーな製品が多い」と語るのは、日本でCBDブランド「ワララ(WALALA)」を立ち上げた柴田マイケル空也だ。昨年10月には米国大手CBDオイル企業の製品に微量のTHCが検出され、日本での販売が停止された実例もあり、「日本のCBD市場は未開拓で、品質や生産背景を曖昧にした企業も存在するからだ」と続ける。柴田は東京生まれ、カリフォルニア州育ち。米国のCBD市場の成長を見てきた経験を生かし、ヘルス&ウェルネス文化を日本で広めるためCBD製品を生産している。現在の販路は公式ECサイトと美容室への卸が中心。東京・白金台のトータルビューティサロン「サン(SUN)」では、CBDクリーム発売開始から1カ月半で3度完売し、予想以上にリピートされたという。柴田に「ワララ」立ち上げまでの経緯やCBDの効能、日本での合法大麻市場の可能性について聞いた。

丸の内ビジネスマンからの転身

ーーなぜCBDに注目したのか?

柴田マイケル空也「ワララ」創設者(以下、柴田):僕が育ったカリフォルニア州では、20年以上前から医療目的で大麻が売買されており、18年1月から嗜好・娯楽目的での使用(21歳以上)も合法化された。米国でのCBD事業はウェルネス市場を席巻し、現在も成長を続けている。しかし大麻へのハードルがもともと低い米国だから急速に広まったわけで、文化の異なる日本で簡単に受け入れられるとは思っていない。それでも、丸の内の金融関係でサラリーマンをしていた僕の経験から、日本社会の慌ただしいライフスタイルやストレスフルな日常に、CBD製品のヘルス&ウェルネスの効能を届ければ生活を改善させられると考えた。それから退職し、米国のスタートアップ企業に携わりながら、日本のCBD事情についてのリサーチやヒアリングを重ねた。19年10月に起業してバランスド(Balanced)を設立し、20年8月に国産CBDブランド「ワララ」を立ち上げた。

ーー日本でのCBD含有製品の販売には、どんなハードルがあった?

柴田:日本の法律では大麻草の葉を使うことが禁じられており、茎と種からのみ抽出した成分でなければならない。米国から日本へ原材料を輸入するため、CBD事業を行う企業10社以上に問い合わせると「葉と穂から抽出し、茎と種は捨てている」との回答だった。CBDに関する多くの論文を読み、茎と種からはCBDはほぼ抽出できないことが分かった。その後リサーチを重ね、植物由来ではなく有機化学合成を用いることにたどり着いた。欧州は日本と同様に葉から抽出した成分は使用禁止で、主に有機化学合成のCBD成分が採用されている。安全な有機化学合成CBD原料を生産しているチェコの企業に出合って販売代理店契約を交わし、日本で100%合法のブランド「ワララ」を立ち上げることができた。全製品の研究開発、製造は日本の工場で行なう国内産ブランドであり、原材料の生産元や品質を提示し、会社として透明性が第一に重要であると考えている。

ーー昨今のスキンケアは植物由来やオーガニックがトレンドとして定着している。有機化学合成だとマイナスなイメージを持たれる可能性は?

柴田:例えばリポビタンDやレッドブルに入っているカフェインは、製薬会社の有機化学合成を使用している。ほかにもビタミンやアミノ酸などのサプリメントも有機化学合成が大半を占めており、一般消費者の身近に何百年も存在している。アメリカの場合は州によって大麻の使用が合法のため有機化学合成をわざわざ用いる必要はないが、日本や欧州では有機化学合成が植物由来の代替えであり、100%合法な選択肢だ。体の疲れを感じてビタミンAのサプリメントを摂取するように、腰の痛みを感じたらCBDクリームを塗るといった、健康補助としての認識を広めていきたい。

ーーCBD含有製品で得られる効能とは?

柴田:“マイナスをゼロに導く”のがCBDであり、不調を改善してくれる効果が期待できる。僕は趣味でブラジリアン柔術をやっていて、体に負荷をかけることが多い。だから痛みや違和感を感じる箇所にCBDクリームを塗って、緩和するために使っている。「ワララ」の製品は、デスクワークによる体の不調や睡眠時の食いしばり、ヒールシューズによるかかとの痛みなどを軽減するために推奨している。CBDはビタミンC誘導体やヒアルロン酸など美容効果の高い成分も配合しているため、美容目的として顔にも使用できる。CBD濃度の高いセラムは、顔のむくみや赤みの改善を目的に新たに開発した。

ーー立ち上げから1年経ち、日本でのCBD市場が成長する可能性は?

柴田:昨年2月に国内の上場企業2社から約4000万円の資金調達に成功し、業界からの高い関心を感じている。CBD事業が注目され始めているからこそ、合法でコンプライアンスを守っているブランドしか成長できないだろう。パンデミックを機にセルフケアの大切さに気づいた消費者は多く、ヘルス&ウェルネスな生活を目的にCBDの認知度が大いに高まっていく可能性はある。「ワララ」のコンセプト“真の美しさは心と体の安定から生まれる”に共感してくれる利用者も増えていくだろう。CBD原料の独占的代理権を持っているため、OEM事業にも乗り出した。日本でのCBD市場は芽を出し始めたばかりで、これから成長していくと期待している。

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

2025年春夏ウィメンズリアルトレンド特集 もっと軽やかに、華やかに【WWDJAPAN BEAUTY付録:2024年下半期ベストコスメ発表】

百貨店、ファッションビルブランド、セレクトショップの2025年春夏の打ち出しが出そろった。ここ数年はベーシック回帰の流れが強かった国内リアルクローズ市場は、海外ランウエイを席巻した「ボーホー×ロマンチック」なムードに呼応し、今季は一気に華やかさを取り戻しそうな気配です。ただ、例年ますます厳しさを増す夏の暑さの中で、商品企画やMDの見直しも急務となっています。

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。