ファッションという「今」にのみフォーカスする産業を歴史の文脈で捉え直す新連載。37回目は韓国ブームに見るオリエンタリズムの行方を考察する。編集協力:MATHEUS KATAYAMA (W)(この記事はWWDジャパン2021年3月1・8日号からの抜粋です)
私がパリコレのウィメンズに欠かさず通っていたのは、1997年から2005年の短い期間だが、その間にもショーの座席の勢力図にはっきりとした変化があった。中国や韓国などのアジア系ジャーナリストやバイヤーが徐々に増え、後半では日本人よりも中国人の席の方が優遇されているショーも多々あった。05年のあるショーでは、指定の座席に行くと、タレントのフワちゃんのように派手な中国人ブロガー(インスタグラムが登場する以前のこと)が座っていて、「そこは私の席だが」と座席番号が書かれた招待状を見せても、「絶対にどかない」と逆上された。結局中国人ブロガーは係員の指示で席を変えたが、パリコレは服を見るだけでなく、世界の勢力図を感じる場でもある。
若手デザイナーの世界的登竜門として知られるフランス国立モード芸術開発協会が主催するANDAMファッション・アワードは、21年度の審査員にフィービー・ファイロ前「セリーヌ」クリエイティブ・ディレクター、フォトグラファーのユルゲン・テラーといったファッション業界の大御所に加え、K-POPグループBLACKPINKのLISAを選んだ。ANDAM賞初代受賞者のマルタン・マルジェラが18年に審査員になったように、権威ある審査員陣にK-POPアイドルが加わったニュースは、現在の韓国カルチャーの存在感を考えさせられる。
ファッション界ではさらにもう一つの韓国ブームが起きている。多くのラグジュアリーブランドのアンバサダーにK-POPスターが選ばれているのだ。前述のBLACKPINKを例にとると、LISAは20年に「セリーヌ」のグローバルアンバサダーに就任している。同グループのROSEは「サンローラン」のブランドアンバサダー、JENNIEは「シャネル」のビューティアンバサダーに抜擢された。19年には「グッチ」がEXOのKAIを、20年には「カルティエ」が香港出身で韓国のボーイズグループGOT7のジャクソン・ワンを起用した。
さらにラグジュアリーファッションとK-POPの結びつきを象徴する事例として、19年に「ディオール」のメンズ アーティスティック・ディレクターのキム・ジョーンズがBTSのステージ衣装を手掛けたことが挙げられる。今年で創業75周年となる「ディオール」が、初めてメンズポップグループに衣装提供をしたのだ。
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