ファッション

「ミューラル」が名古屋のヘア&ファッション複合店「ユルク」とコラボした理由 異業種コラボ成功の裏側

 村松祐輔と関口愛弓デザイナーによる「ミューラル(MURRAL)」は、名古屋のヘアサロン兼セレクトショップの「ユルク(jurk)」とのコラボレーションに合わせたポップアップを同店で3月16日まで開催している。ポップアップの装飾はフラワーアーティストのエデンワークス(edenworks)が手掛けており、ドライフラワーで協業のキーモチーフであるパレットの色が滲み出る様子を躍動感あるムードで演出した。ユルクは2019年4月にオーナー兼クリエイティブ・ディレクターの沢井卓也が独立してヘアサロンを開業し、20年8月に複合ショップとして拡張移転。ショップマネージャー兼バイヤーの新美歩をはじめ、インスタグラムで多くのフォロワーを抱えるスタッフが多数在籍している。4月1日には同ビル内にネイルサロンもオープンするという。東京のデザイナーズブランドと、名古屋の新鋭ショップという異業種コラボが実現した背景や狙いを両者に聞いた。

コラボのきっかけは「自然な形で」

 協業のきっかけは、沢井オーナーが「ミューラル」の展示会場を訪れた際に、エデンワークスが装飾を手掛けた空間を「ユルクでも再現したい」と提案。「ミューラル」もファッション的なアプローチをするヘアサロンとして以前から注目しており、「突発的だけど、自然な形でスタートした」と村松デザイナーは振り返る。

 コラボレーションのキーワードは、“Life is a palette”。パレットのプリントのアイテムや限定カラーのセットアップ、“ヘアカフ”など5点を製作し、「ミューラル」の公式ECサイトとユルクで販売している。パレットの色が滲み出る様子を躍動感のある雰囲気で表現。「ミューラル」ならではの色使いと、ハイトーンのヘアを得意とするユルクの“色”が混ざり合い、“理想の色”ができる場所としてパレットをキーモチーフにした。プリントは関口デザイナーが両者の“色”をイメージして描いており、水彩画のように色と色が完璧に混ざり合うのではなく、アルコールインクでそれぞれの色が引き立つように表現している。

異業種コラボならではのヒットアイテム誕生

 異業種コラボを象徴するのが、カチューシャとイヤカフを融合したヘアアクセサリー“ヘアカフ”だ。沢井オーナーは「ヘアも提案できるショップとして、ヘアピンやカチューシャ、イヤカフなどフェイス周りや耳周りを彩るアクセサリーを作りたかったが、どれも単品だと弱い気がした」と話す。お互いに何度もやりとりを重ねて生まれたアイデアが“ヘアカフ”だった。村松デザイナーは「テーマの“パレット”ともマッチし、自由で躍動感のあるアイテムになった」とし、沢井オーナーも「ユルクが得意とするショートやボブはアレンジが効きにくく飽きられやすい。“ヘアカフ”を耳にかけるだけでモード感がプラスされるのでアレンジを楽しんでほしい。“ヘアカフ”という新しいジャンルを確立したい」と話した。“ヘアカフ”はユルクのインスタグラムで高いパフォーマンスを記録し、「ミューラル」の公式ECサイトでも販売開始から5分で完売した。この反響を受けて再販が決定しており、両者の公式ECサイトとユルクの店頭で3月17日18時から21日23時59までプレオーダーを受け付ける。

8年目でも攻め続ける「ミューラル」

 ポップアップ初日は「ミューラル」とユルク、それぞれのファンが来場して盛況だった。名古屋で「ミューラル」を取り扱っているのは現在ユルクのみだが、村松デザイナーは手応えを感じている。「数年前までは『名古屋の人はあまり冒険せず、落ち着いた色を好む』と言われていた。そんな中でユルクの尖った個性は新鮮だったし、店がブランド化して個性や発信力が強いからこそ上手くいった。また東京のセレクトショップもここ1年で名古屋に進出し始めており、街としても盛り上がっている」。沢井オーナーは「SNSで遠方の人にも届けられるようになったおかげで、名古屋=コンサバという印象はほとんどなくなった。強いヘアカラーやファッションを探している人が、東海地方を中心に集まっている」と分析する。村松デザイナーは「今後もブランドのアイデンティティーやフィロソフィーに共感してくれるところとジャンルを問わずに協業し、『ミューラル』のさまざまな一面を発信していきたい」。

 また「ミューラル」は、国内と同時に海外市場の強化にも動いている。中国のSNS運用とマーケティングをスタートし、今夏にはウィーチャット(WeChat)が運営するECサイト上で中国への本格進出を図る。さらに香港や台湾などへの拡大も計画しており、近い将来には欧米市場も視野に入れるなど、グローバルブランド化への道すじを描いている。「『ミューラル』は13年設立だが、こんなに長くやっていてもまだチャレンジできることがある。特にこんなご時世だからこそ、毎日常に真剣勝負でやれることは素晴らしいことだ」。

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