月刊誌「WWDビューティ」には、美容ジャーナリストの齋藤薫さんによる連載「ビューティ業界へオピニオン」がある。長年ビューティ業界に携わり化粧品メーカーからも絶大な信頼を得る美容ジャーナリストの齋藤さんがビューティ業界をさらに盛り立てるべく、さまざまな視点からの思いや提案が込められた内容は必見だ。(この記事は月刊WWDビューティ2020年12月号からの抜粋です)
権威ある米アカデミー賞さえ、会員の偏りや差別問題などが絡み、毎回のように物議を醸す。世界的なミスコンだって、人が人を選ぶ結果が100%の納得をもたらす事はないし、最近は話題先行の力学が見え隠れ。極端な話、古代オリンピックの末期には、勝ち負けが明快な競技にすら不正が目立ったという。
もちろん今や1つの風物詩、日本の「ベスコス」を同じ次元で語れるはずもない。ただ一部の審査などに関わっている立場上、批判覚悟で自戒も込めて言うならば、やはり昨今さまざまに指摘されているように、問題を孕んでいないとはいえない。まずその数があまりにも多いこと。いや多くの雑誌が関わるからこそバランスが取れるとも言えるし、ベスコスも多様化していい。ただ受賞作発表号は当然のことながら必ず売れるわけで、その分乱暴なものになってはいけないと思うのだ。
例えば2020年はコロナ禍で、発売延期や発売中止、PRが十分にできなかった製品もあれば、ウィズマスクで口紅などは無残なほど売れなかったわけで、それでもベスコスは何事もなかったように行われた。いやこんなときこそ前向きに!そういう言い方もあるが、ベスコスとは何なのか?それを立ち止まって見直す良い時期ではあったのかもしれないのだ。少なくとも最近は、そのあり方を自ら見直し、忖度なしのガチ宣言をした雑誌や、あくまでも自腹を切った一般消費者だけが選ぶものに切り替えたり、また売り上げのランキングをその賞に変えたりする媒体も現れた。静かに自浄作用が働き始めたと言っていいが、一方で、コンビニスイーツまでが細かくランキングされる時代、それを望む消費者はむしろ増えているし、順位があるからこそ、業界が切磋琢磨しどんどん製品を進化させていくのは本当に喜ばしいこと。
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