ファッション

「#️FR2」の石川涼がアトモスと仕掛けるスニーカービジネスの構想

 インスタグラム黎明期に“1億総カメラマン時代”を予言したかのような“カメラマンが着る服”というコンセプトのブランド「#FR2」を立ち上げたせーのの石川涼社長が、昨年12月に、今度はスニーカーヘッズ(熱狂的なスニーカーコレクターを指す)のためのブランド「ザ・ネットワーク ビジネス(THE.NETWORK BUSINESS)」を立ち上げた。今や世界的なスニーカーショップへと成長したアトモス(ATMOS)の全面協力のもと、これまでに“エア マックス95”や“エア ジョーダン1”など、ハイプなスニーカー5型に合わせた肉厚のフーディとスエットパンツを発売。公式オンラインサイトとアトモスの店舗で発売するや、次々に完売し、ヘッズの間で早くも話題になっている。「スニーカーは世界共通言語」と語る石川社長の次の一手は?石川社長とアトモスの小島奉文ディレクターにブランド立ち上げの経緯を聞いた。

WWD:ブランドを立ち上げたきっかけは?

石川涼せーの社長(以下、石川):コロナ前ももちろんスニーカーに対する熱狂はものすごいものだったと思うけど、コロナになってより加速している感じがした。毎日、SNSで「買えた」「買えなかった」と誰かがつぶやいているし、ヤフオクやメルカリでバンバン取引されているのを見て、これはビジネスになるな、と。ただ、自分たちはスニーカーとの接点を持ってないから、やろうと思っても自力ではできない。それで以前から知り合いだった小島さんに相談したんです。

小島奉文アトモスディレクター(以下、小島):スニーカーヘッズをターゲットにしたブランドって実は全然ないので僕らもそれは面白いと思い、全面的に協力させていただくことにしました。石川さんはスピード感もあるので、やろうと言ったら非常に早い。すぐに話が進んでスタートすることになりました。

WWD:「ザ・ネットワーク ビジネス」というブランド名の由来は?

石川:スニーカーが世界の共通言語なんで、世界中で発売日がほぼ一緒だし、同じものを世界中の人が見て、同じ日に世界中で熱狂している。世界中の人が同じ日に二次流通も巻き込んでワーワーと盛り上がっているわけじゃないですか。これを“ネットワークビジネス”と言わずしてなんと言うんだと思って。日本人にはネガティブなワードに聞こえるかも知れないけど、逆にその違和感を逆手に取った方が覚えてもらえるかなと思ったんです。

WWD:これまでの石川さんのビジネスはそのカルチャーの黎明期にブランドを始めることが多かったと思います。「ザ・ネットワーク ビジネス」はスニーカーブームの中ではかなり後発だと感じましたが。

石川:昔は洋服に合わせてスニーカーを選んでいたと思うけど、スニーカーのカラーリングに合わせたセットアップとか、今はスニーカーに合わせて洋服を選んでいる人が多いんじゃないかなと思ったんです。スニーカーの行列に並んでいる人たちも例えば“エア ジョーダン1”の“シカゴ(赤白黒のカラーリング)”を履いて「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」の黒いパンツに「シュプリーム(SUPREME)」の赤いダウンを合わせたりしてる。そうするとスニーカーに合わせた赤黒のコーデができるから。そういう視点で設計しているブランドが世の中にないな、と。盛り上がっているコミュニティーがあって、そこに足りないものや、ありそうでないものがあるからそれを提案している感じ。しかも90年代だったらできなかったけど、今だったら一斉に世界に向けて売れる。そうすればニッチなマーケットでも世界中にバラ撒けるんで、大きなうねりにできる。日本の中だけで(売上高)10億円売るより、世界で100億円売る方が供給量も多く感じないし、そういうイメージでビジネスができると思ったんです。

WWD:今後は海外にも販路を広げていくんですか?

小島:そうですね。アトモスもアジアやアメリカなど、世界で店舗を増やしています。世界のスニーカーショップといっても名店と呼ばれる店は決まっているので、種類が揃えばそういう店やスニーカーインフルエンサーとのコラボレーションもできると思います。スニーカーをフックに総合的に仕掛けていきたいですね。

WWD:最初に発売したスエットのセットアップ(3万6000円)には、「上下サイズ違いで着たい」という声があったと聞きました。それを受けてバラ売りにしたとか。ほかにも修正点はありましたか?

小島:インサイトのデータは集められるので石川さんにもフィードバックして、その都度改善しています。ほかに、バリエーションやグッズはないのかという問い合わせも多いです。

WWD:「#FR2」と同じ価格帯ですか?

石川:「ザ・ネットワーク ビジネス」の方が少しだけ安い。基本的にスニーカーが好きな人たちなので、ある程度の価格に抑えないとスニーカーと一緒に買えないから。

小島:第1弾の“エア マックス95”をイメージしたセットアップは、スニーカー合わせて購入すると6万円でした。それで買いやすいようにバラ売りにしたのもあるし、もっとシンプルに合わせられるように、スニーカーからインスパイアしたキャップやソックスも準備中です。

石川:ただ僕は別軸でもいいかなと思っていて、アイコニックなものは別に数が少なくてよくて、売り上げを取れなくてもいい。定番としてやりながら別のベーシックなものを売っていく。アイコニックなものに対して、最初「え?」って思う人もいると思うけど、やり続けて時間が経っていくとどこかのタイミングで誰かが着てくれて、争奪戦になるかも知れない。そういうことが起こるともっとスピード感が出てくるかな。

WWD:ハイプなスニーカーは欲しくてもなかなか買えなかったりします。

石川:だからいい。だから次に繋がっていく。ずっと買えていたり、受注生産になった瞬間に誰も欲しくなくなるんで。

WWD:今ブランドを存続させるために必要なことは?

石川:僕は毎日変わっていく環境が一番大事だと思ってるんで、そのときそのときの環境で意見が違うけど、今は数が売れないので、とにかくニッチな方にいって、他の人たちと違うってものがないと売れない。あとはとにかくセールをしないことと、2次流通はお客さんに任せること。「#FR2」は昨年春の緊急事態宣言が出たときに2回セールをしたけど、6年間で2回だけ。1次流通がセールをしないことで、お客さんがセールをしたり処分したりしてくれる。それがすごく大事だと思います。

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