コンサルティング会社のアクセンチュア(ACCENTURE)は、業績が好調な企業の60%が「製品そのものよりも最高のカスタマーエクスペリエンス(顧客体験)を追求すること」を重要視しているとした新たな調査リポートを発表し、顧客第一主義がビジネス成功の鍵であると分析した。
顧客満足度の向上に向けた投資は目新しいものではないが、昨年急増したテクノロジーへの投資は、消費者行動が急速に変化していく中で企業がリアルタイムのデータを参照し、迅速かつ確実な意思決定を行うという新たなプロセスをもたらした。
アクセンチュアのリテール部門のエリック・シーア(Eric Shea)=マネジング・ディレクターは、「新型コロナウイルスの感染拡大によって、顧客第一主義の重要性が明らかとなった。消費者の行動や習慣が瞬く間に変化したことで、リテーラーやブランドのデジタル収益が増加した。また、デジタルチャネルの活用が増加したことで新たなオムニチャネル導入の動きもある。リテーラーはビジネスの状況を把握し、消費者の変化に適応するため、より多くのデータを収集する必要がある」とコメントした。
顧客体験を強化するには、収集したデータを適切に扱うことのできる人材も必要だ。シーアは「データの重要性はこれまでと同じだが、消費者の行動が急速に変化している現在においては、ミクロレベルの視点を持つことも大切だ。以前のように前年度の収益を上回ることを目標にするだけではなく、顧客の多様性を認めた上で、それぞれの需要を満たすことが求められている」と語った。
アクセンチュアによると、企業は金銭的な取引だけに着目するのではなく、その先にある顧客の生活の質の向上を最優先に考えることが重要だという。シーアは「顧客は経験の対価としてお金を払っている。CXに焦点を当てることで顧客から見たビジネスの価値が向上し、その結果企業価値も高まる。ただし、どのような経験に価値を感じるかはそれぞれの顧客によって異なる」と述べた。
またリポートでは、企業が組織全体の行動を変えることで製品やサービスそのものと実際の経験とのギャップを埋めることが可能となり、そうした取り組みが真の意味での革新的戦略だとしている。また主要企業の53%が、「需要を反映した新たなスタンダードを設定し、製品やサービス、それに付随する経験等を革新し続けることが求められている」と認識している。
シーアは「解決策は一つではない。マーケティング戦略を構築するには、市場を細分化し、顧客を分類するセグメンテーションを行う必要がある。そこでミクロとマクロの観点の違いや、消費者が実際に何を求めているか、彼らにとっての価値ある経験とは何なのかを問いかける。さらに、どのような価値を提供できるか、何を実現する必要があるのか、顧客にとってより良いサービスや経験を提供するには何が必要かを導き出す。顧客や既存の顧客エンゲージメントに関する正確なデータを収集し、消費者自身もまだ気付いていない購買行動への本音や動機であるインサイトを明らかにすることが先決だ。消費者のニーズを細かく理解し、自社の目的との一致点を見つけることが重要だ」とコメントした。