ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)は3月18日、キノコ由来の人工レザー「マイロ(MYLO)」を用いた衣服を2型発表した。今回発表したアイテムは販売予定はないが、今後発表するコレクションに「マイロ」を取り入れていく予定だ。
「マイロ」は無限に再生可能なキノコ類の地下根系である菌糸体(マイセリウム)から作られており、バイオテックベンチャーのボルトスレッズ(BOLT THREADS)が開発し、かねてから注目を集めていた素材。ステラ マッカートニーは2017年7月にボルトスレッズとパートナーシップを締結し、18年には「マイロ」を用いたアイコンバッグ“ファラベラ”のプロトタイプを発表。同年ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館で開催された「ファッションド フロム ネイチャー」展で展示していた。20年10月には、アディダス(ADIDAS)とケリング(KERING)、ルルレモン(LULULEMON)とともにボストスレッズと戦略的パートナーシップを結び、21年中の商品化を目指している。
ステラ・マッカートニーは「私は『ステラ マッカートニー』のコミュニティーが、サステナビリティのためにラグジュアリーな魅力を妥協する必要は決してないと信じている。『マイロ』を採用することでその両立が実現する。今回発表する稀少でエクスクルーシブなアイテムには、ファッション業界を革新し、より思いやりのあるものにするというステラ マッカートニーとボルトスレッズ共通のコミットメントが具現化されている。これは、私たちの仲間である生き物や地球を犠牲にすることとは対照的なものとして、美しいラグジュアリー素材の誕生を見据えた取り組みだ」とコメントを発表。
ボルトスレッズのダン・ウィドマイヤー(Dan Widmaier)共同創業者兼CEOは「新たな高品質のバイオマテリアル(生体材料)の開発は、重要な技術的課題であると同時に、人々と地球にとって非常に大きなチャンスでもある。ステラ、そして彼女のチームには、『マイロ』の存在を世界に発信するための長期的なパートナーシップとサポートをいただき、非常に感謝しており光栄だ。今回発表した2つのアイテムに『マイロ』が採用されたということは、バイオマテリアルの持つ美しい魅力と性能の両方における大きな前進であるばかりか、これらを衣料品の素材として採用する準備が整い、いよいよ市場への投入が始まりつつあることを意味するものでもある。これは、大規模な生産に向けた具体的な進歩であり、『マイロ』が地球にとって大きなプラスの影響を与えるチャンスなのだ」とコメントを発表した。
今回発表した「マイロ」素材のアイテムは、ブラックのビスチェトップとパンツで、どちらも、リサイクルナイロンの上に菌糸体ベースの素材を重ねた素材でどちらもロンドンのスタジオで手作業で作られた。
ボルトスレッズによると「マイロ」は、柔らかく、しっかりとした質感が特徴。バイオベース素材として認定された、自然界に存在する再生可能な成分を主に作られている。ボルトスレッズは、菌糸体が最もよく成長する林床の下で起こる仕組みを研究室で再現し、木くずやおがくず、空気、水を用いて「マイロ」を作成する方法を開発した。
環境への影響を最小限に抑えるようにデザインされたプロセスで、「マイロ」は14日以内に製造できるという。通常、皮革1キログラムを生産するのに要する水の量は1万7000リットルにのぼり、また、畜産は、世界の温室効果ガス排出量の約18%を占めており、生態系の破壊の要因のひとつとなっている。現在、アマゾンの森林伐採地域の70〜80%が家畜の牧草地として使用されている。
ボルトスレッズは、09年創業。カリフォルニア州エメリービル拠点。ベンチャー企業専門メディアのクランチベースによると、これまで累計2億1300万ドル(約230億円)を調達している。
キノコの菌糸体から作られる人工レザーの課題の一つは強度と耐久性で、先日「エルメス」がマイコワークス(MYCOWORKS)と開発した菌糸体から作られた人工レザーは、エルメスのなめし工房で仕上げることで、強度と耐久性を高めている。「エルメス」が発表した商品は発売予定だ。なお、マイコワークスはボルトスレッズと同じくカリフォルニア州メリービル拠点。