コロナ禍で外出する機会が減り、「WWDジャパン」のデニム担当記者でさえジーンズをはかなくなった。毎年行っているデニム特集でも、ここ数年は「デニムは売れていない」と伝えており、“デニムは瀕死状態にある”と仮説を立てた。しかし大手SPAの「ユニクロ(UNIQLO)」は、「好調さが戻ってきている」(菊地健太郎ユニクロ グローバル商品本部 R&D部 部長)という。
WWD:コロナ禍でもジーンズは悪くない?
菊地健太郎ユニクロ グローバル商品本部 R&D部 部長(以下、菊地):一時はジャージーライクなジーンズやスエット、ウィメンズではレギンスなどが良かったが、ウィズコロナの生活が根付いてから、具体的には昨年末ごろから“ジーンズらしいジーンズ”というのか、メンズでは綿100%のセルビッジジーンズの売れ行きが復調傾向にある。もちろん“ウルトラストレッチジーンズ”(3990円税込)や、ウエストをリブにして取り外し可能なドローストリングを付けた“EZYジーンズ”(3990円税込)に代表されるコンフォート系は男女共に堅調で、二極化してきている。
WWD:セルビッジ復権の要因は?
菊地:セルビッジであることより、「ユニクロ」で“レギュラーフィットストレート”と呼ぶゆったりめのシルエットが、ウィメンズのトレンドであるハイライズなどと呼応しているのだと思う。
WWD:そのウィメンズでは、女優・綾瀬はるかを起用したCMでもジーンズを訴求している。
菊地:CM効果もあり“スリムストレートハイライズジーンズ”(3990円税込)が数字を伸ばしている。ハイライズでいえば、クリストフ・ルメール(Christophe Lemaire)がアーティスティック・ディレクターを務める「ユニクロ ユー(UNIQLO U)」の“レギュラーフィットストレートハイライズジーンズ”(3990円税込)も良い。
WWD:春ジーンズが“綾瀬はるか売れ”していることは分かったが、夏に向けての打ち出しは?
菊地:東レと共同開発した合繊100%の新素材を使った“テックデニムジーンズ”(3990円税込)を推している。
WWD:“テックデニムジーンズ”は2021年春夏シーズンにデビュー?
菊地:その通りだ。デニムの面構えながら軽量で、清潔な服が求められる時代に、洗濯してもすぐ乾く点が魅力だ。しかも素材と染料の特性により綿に比べて移染しづらく、おうち時間が増えた今、家着としても最適。合繊ゆえ肌当たりに冷感もあり、気温・湿度が上がっても快適にはいてもらえる。実際、日本より暖かいASEAN諸国では早くも良いリアクションが出ている。“スリムストレートハイライズジーンズ”も“テックデニムジーンズ”も、すでにコロナ禍にあった約1年前から開発を進めてきた商品だ。大きく花開くことを期待している。
WWD:古着発のトレンドである“Gジャン”がセレクトショップなどで売れ始めている。「ユニクロ」での動きは?
菊地:定番としてはラインアップしているが、まだ大きな動きはない。一方で、軽めのカバーオールやデニムシャツなどの羽織りモノが良い。女性がメンズの商品を購入して、ボクシーかつ大きめのシルエットで着ることも恒常化している。これまで「ユニクロ」の服はタイトめだったので、ある意味で新たな消費動向と言えるだろう。
「WWDジャパン」3月22日号では「ユニクロ」のほか、メーカーを代表して「リーバイス(LEVI'S)」、小売りを代表してビームス、古着店を代表してベルベルジンに、ジーンズの売れ行きについて聞いた。異口同音に「売れている!」と話しており、その理由や実際に動いているアイテムについてまとめている。