3月18日は、「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」を運営するZOZOのエンジニアたちにとって記念すべき1日だ。「ゾゾタウン」のウェブサイトとアプリの大幅リニューアルに加え、新たにハイブランドを集積した「ゾゾヴィラ(ZOZO VILLA)」とコスメを集積した「ゾゾコスメ(ZOZOCOSME)」をオープンさせ、さらには「ゾゾコスメ」の強力な販促ツールである肌計測ツール「ゾゾグラス(ZOZOGLASS)」のためのシステムも動かせねばならかった。テクノロジー部門を率いる伊藤正裕ZOZO取締役COOは、「圧倒的に“過去イチ”大変でした(笑)」と笑いながら話すものの、リニューアルにはつきもののシステムトラブルなどもなく、ほっと胸をなでおろしたはずだ。
伊藤COOは2014年に自らが立ち上げたベンチャー企業ヤッパとともにZOZOに合流後、15年以降は技術部門の実質的なトップとしてZOZOのエンジニアたちを率いてきた。その伊藤COOにとっても、3月18日は重要なターニングポイントだ。「ゾゾタウン」は従来の「全てのアイテム」に加え、「シューズ」「コスメ」「ゾゾヴィラ」という3カテゴリーに分割し、「アイテムごとに“モジュール化”した。今後は各カテゴリーで、裏側でAI(人工知能)を走らせユーザーに合わせてパーソナライズする。ユーザーが欲しいものをジャストなタイミングで見せられる、そうしたサイト設計に変わっていく」という。
一方「ゾゾコスメ」はロケットスタートとはいかなかった。取扱数500ブランドを打ち出しているものの、スタート時のコスメショップ数は約50で、目玉である「ディオール(DIOR)」「ジバンシイ(GIVENCHY)」「ゲラン(GUERLAIN)」の3ブランドの販売は18日のオープン日に間に合わなかった。また、最大手の日本ロレアルのブランドを筆頭に、若い女性に人気の「スック(SUQQU)」「シロ(SHIRO)」も現時点では出店していない。伊藤COOは「データベース連携やセキュリティ監査などで、思った以上に時間がかかっている。公表していないものの、(出店が)決まっている企業がまだ他にもある」と語るものの、ある国内の有力化粧品ブランドは「いまは様子見」と、慎重な姿勢を見せている。
ただ、「様子見」という姿勢であれば、近い内に出店することになる可能性は高い。「ゾゾタウン」がコスメが相性がいいのは明らかで、女性のアクティブ会員を533万人も抱え、しかも最も多くの割合を占めるのが16〜24歳のZ世代なのだ。ほとんどのファッションブランドの場合、「ゾゾタウン」支店だけでリアル店舗の旗艦店の数倍を軽く売り上げる。そのケタ違いのパワーは、化粧品ブランドにも発揮されるだろう。そうなると今は「様子見」のコスメブランドも、遠からず出店に動くはずだ。
サイトリニューアルをひとまず成功させた伊藤COOにとって、今後の課題はビッグデータの活用だ。ヤフーやLINEの抱えるビッグデータはどこまで「ゾゾ」の販売を底上げできるのか。ヤフーやLINEの持つ情報はメディアとしての閲覧履歴や属性データなどで、コマースにとって最重要な情報である購買データを豊富に持っているわけではない。だが伊藤COOは、「これはあくまで非常に単純なたとえ話」と前置きした上で、「たとえば車が好きな人がいたとしてマセラッティが好きな人とローバーが好きな人、ベンツが好きな人のファッションってそれぞれ違いますよね。データの活用にはそのような可能性も一つある。水面下では試験的にヤフーの情報を活用する試みも行っているが、確実にシナジー効果は出ている」という。
Zホールディングスのグループ全体でビッグデータを活用し、それを「ゾゾタウン」の販売にも生かす、という試みが本格的に始動するのはいつなのか。「現時点では確かなことは言えないが、スケジュール的には2〜3年以内というところ。やるべきことは見えていて、あとはどう実行に移すかというフェーズに入っている」。