ファーストリテイリング傘下のジーユーが生理用の吸水ショーツをはじめとしたフェムテック分野に参入したという記事を興味深く読んだ。(この記事はWWDジャパン2021年3月22日号からの抜粋です)
最近はD2Cブランドなどを中心に、生理ナプキンなしで着用できる吸水ショーツの発売の動きが相次いでいる。だが、それらの中心価格は3900〜5900円くらいで決して安くない。一方、ジーユーは1490円だ。機能性に違いがあるのかもしれないが、吸水ショーツになじみのない多くの女性にとってはハードルがぐっと下がるだろう。
この1年間で経済的な理由で女子学生の5人に1人が生理用品の購入に苦労した経験を持つ――。今月初めに衝撃的な調査結果が報じられた。これを受けて豊島区(東京都)や明石市(兵庫県)などの自治体が生理用品の無料配布に動いたり、ファミリーマートが年内2%引きで販売すると発表したりした。女性の健康課題をテクノロジーで解決するフェムテックが注目を集めている。だが、それ以前に憲法で保障されているはずの健康で文化的な最低限度の生活を営む権利が危うい現実が露呈した。
ジーユーで吸水ショーツの開発を担当した椎名玲子氏は、3月8日の会見で「手に取りやすい価格にすることで、女性が自らの体について考えるきっかけになれば」と話した。吸水ショーツは女性の健康支援を目的にしたプロジェクト「ジーユー ボディラボ」の初回商品の一つ。同じファストリ傘下のユニクロもサニタリーショーツの販売をECと一部店舗で昨年夏から始めた。ファストリの店舗数の多さが消費者との接点として機能する。生活に不可欠な日用品においてはファストリの圧倒的なスケールメリットが生きてくる。
今回のファストリの取り組みから「水道哲学」という言葉を連想した。
水道哲学とは松下電器(現パナソニック)創業者の松下幸之助(1894〜1989年)が説いた経営思想。すなわち、水道の水のように低価格で良質なものを大量供給することで、物価を下げて大衆の手に容易に行き渡るようにしようという考え方である。
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