イタリアの大手眼鏡メーカー、デリーゴ(DE RIGO)の日本法人デリーゴジャパンの新社長に3月1日付で沖本晴彦氏が就任した。
沖本氏はニコン・エシロールの出身。同社の先輩である羽中田政樹・前社長のオファーを受け、昨年10月に副社長としてデリーゴジャパンに入社した。眼鏡業界における約30年のキャリアの中で、レンズ、フレーム、サングラス、眼鏡機器など一通りのビジネスを手掛け、国内営業はもとよりアメリカやアジアの事業拡大にも携わるなど豊富な経験とネットワークの持ち主だ。
デリーゴジャパンの柱はハウスブランド「ポリス(POLICE)」を始め、「ショパール(CHOPARD)」「フルラ(FURLA)」「エスカーダ(ESCADA)」などのブランドビジネス。日本はデリーゴ全体の売り上げの6%を占める重要な市場ながら、2020年12月期はコロナの影響でイタリア本社と同様に20%以上の減収だった。厳しい商況の中で新体制の船出となったが、どのような成長戦略を描いているのか。リニューアルした同社のショールームで話を聞いた。
WWD:眼鏡事業のマネージングは久しぶりだ。
沖本晴彦デリーゴジャパン社長(以下、沖本):約10年ぶりです。レンズ事業と勝手が違いますが、違和感は全くありません。トップとして全責任を負うことへの新鮮さを感じています。
WWD:市場環境はどう変化している?
沖本:かつて大手眼鏡メーカーが海外ブランドのライセンス事業で興隆を極めていた時代が終わり、「ジンズ(JINS)」や「ゾフ(ZOFF)」など新勢力の台頭を受けて、眼鏡専門店も強みを生かしたハウスブランドにますます力を入れているのが現在です。ブランドビジネスが縮小しています。
WWD:今の売り上げの推移は?
沖本:1月、2月は苦戦が続いていますが、「ポリス」や「フルラ」の2万円代の商品は健闘しました。全般的に高価格帯の売れ行きが鈍いようです。
WWD:新体制の下、どんな戦略を練っている?
沖本:技術畑出身の羽中田氏が築いた経営基盤をしっかりと受け継ぎながら、営業畑出身の私らしい成長戦略を描いています。まず着手しているのは、営業の組織改革です。ポイントはデジタルを駆使しながら、マネージメントやマーケティングを連動して市場とコミュニケートしていくしくみを変えること。そして、各カテゴリーでナンバーワンのブランドを育てることです。2番手、3番手ではシェアが取れない。
WWD:ナンバーワンになるための具体策は?
沖本:差別化しかありません。全体の売り上げの半数近くを占める主力の「ポリス」は、従来のモデルに加え、ワンランク上の質の高い日本製品を発売します。日本のユーザーに合わせて特別に開発されたコレクションです。さらに、若い世代に向けた企画も検討中です。各ターゲットに特化した商品提案を進めます。
WWD:ブランドポートフォリオも増えている。
沖本:日本における独占販売代理契約を結んだドイツの「ローデンストック(RODENSTOCK)」と「ポルシェデザイン(PORSCHE DESIGN)」に加え、「トゥミ(TUMI)」を販売します。100年以上の歴史を持つ「ローデンストック」は、日本でもシニア層を中心に根強い人気がある。コアな愛用者を大切にしながら、どのようにファンの幅を広げていくのかが課題です。「ポリス」や「ローデンストック」は、今後も成長の可能性を秘めています。
ミケーレ・アラクリ(Michele Aracri)=デリーゴCEOは日本のビジネスについて、「沖本氏が積み上げてきた営業実績と、デリーゴジャパンのチーム力を融合させて日本市場におけるさらなる成長を確信しています。沖本氏とは、ハウスブランド強化の重要性について意見を交わしました。『ポリス』はまだ成長できるポテンシャルがあり、さらなる拡大を目指すという共通認識を持っています。また『ローデンストック』とのパートナーシップのおかげで、ミドル&ハイセグメントのブランドを取り扱う眼鏡小売り店との取引も増えている。新たな気持ちで、2021年を出発できました」とコメントした。