合同展示会「第8回ファッション ワールド 東京 春」が23日に東京ビッグサイトで開幕し、初日は前回を上回る約5000人が来場した。同展はアパレル、バッグ、シューズ、生地・素材、OEMなど6つのゾーンで構成され250社が出展している。初開催となる「第1回 国際 サステナブル ファッション EXPO 春(以下、サステナブルEXPO)」は特に活況で、開場と同時に多くの業界関係者が訪れていた。
サステナブルEXPOは豊島、瀧定名古屋、日鉄物産といった大手専門・複合総合商社を中心に副資材、アパレルメーカーなど100社が出展している。前回は一コーナーだったものを反響が大きかったため規模を拡大し独立させた。ファッション ワールド 東京の矢島大地事務局長は「“これを待っていた”という声を多くいただく。もはやサステナビリティはファッションビジネスになくてはならない存在だ」と話している。
とはいえ来場者のサステナビリティへの知識や関心にはバラつきがあるため、集客の成否は展示の分かりやすさがカギを握る。豊島のように複数のサステナブル繊維・ブランドを扱う企業は広いスペースにそれらを一堂にそろえ、製品開発の背景や消費者への伝え方などを含めてわかりやすく展示することで来場者の関心を集めていた。また、手に取りやすいショッパーやハンガーといった副資材のブースも盛況だ。東京吉岡はネームタグや植物由来で生分解性があるプラスチックのショッパーのほか、10メートルから別注可能な100%再生ペットボトル糸のジャカード生地などを販売している。同社の髙岡勝宏代表取締役常務は「サステナビリティに関心があったがどこから初めていいかわからなかった方に気軽に手に取ってもらっている」と言う。
同展でお披露目の企画やブランドも目立ち、ニチモウは廃棄予定のリンゴから作る人工レザー「アップルレザー」を発表した。中でもにぎわっていたのが三井物産アイ・ファッション、ソトー、吉田染工、貴志川工業、ループからなる「バナナ クロース」推進委員会のブースで、廃棄されるバナナの茎を使った繊維と製品を披露している。バナナの茎部分は年間約10億トンと言われており、その繊維と綿を混紡した糸はリネンのような質感だ。発起人のひとりであるM・Nパートナーズの新田守氏は、「バナナ繊維は繊維を採る目的で栽培する必要はなく、むしろ環境汚染につながる廃棄物が糸となる、循環型社会に貢献できる、夢のある繊維だ。”第5の天然繊維”に育てたい」と話す。三井物産アイ・ファッションの今井徳社長は、「特殊繊維は一過性のブームで終わりがち、そうしないためにも1企業の利害で独占するのではなく、その良さを共有できるメーカーや小売りとのオープンシステムで普及したい」と言う。
会場内ではセミナーも数多く開かれており、感染対策として通常の半数の席数てしているが集客につながっている。同日朝一番には日本環境設計の岩元美智彦・取締役会長が循環型社会をテーマに講演を行い500人が聴講した。「サステナビリティへの熱は明らかに高まっている。昨年10月に政府が2050年カーボンニュートラル宣言を行ったことで、ファッション業界に本格的にスイッチが入ったようだ」と岩元会長。同社の衣料リサイクルブランド「ブリング(BRING)」にも連日問い合わせが入るという。「とはいえファッションとサステナビリティの関係はまだ始まったばかりで小さな点のような存在。まだまだこれからだ」。同展は3月25日まで開催している。