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2030年、ラグジュアリーの形はどうなっている? リセールやレンタル、“シンクフルエンサー”に注目

 コンサルティング会社のベイン&カンパニー(BAIN & COMPANY)と、持続可能な取り組みを積極的に行うラグジュアリーブランドにバタフライマーク認証を付与しているポジティブ ラグジュアリー(POSITIVE LUXURY)は3月10日、“LuxCo 2030:サステナブルなラグジュアリーの展望(LuxCo 2030: A Vision of Sustainable Luxury)”と題したリポートを公開。成功しているサステナブルなラグジュアリーブランドの2030年の様子を予測した。

 ベイン&カンパニーのマッテオ・カペッリーニ(Matteo Capellini)=アソシエイト・パートナーは、「ブランドがサステナビリティに取り組む上で最も難しいことの1つが、短期目標と長期目標の橋渡しを行って総合的に考えることだ。このリポートが、ブランドや経営者が行動を起こすきっかけになればいい」とコメントした。

 リポートは、以下の5つの戦略的要素から成る“サステナビリティ ・チャンピオン”こそが、各ブランドが取り入れるべき指標であるとしている。

1.ブランドの目的
2.成長性を売上高と切り離して考えること
3.100%透明かつ追跡可能なサプライチェーン
4.インクルーシブであること
5.サステナビリティを根本に据えた事業

 ラグジュアリーブランドが将来的に成長していく上で、思考の転換は必須だ。株主たちも成長性と売上高を切り離して考える必要があると認識しており、リポートでは「少ない方がより確実に豊かである」として、大量生産に頼らない成長を促している。

 同じ品質の製品を繰り返し生産することで利益を得る手法は、サステナビリティに逆行する。そこで、リセールやレンタルといった循環型ビジネスモデルを有効戦略として掲げることが重要となる。2030年には、ラグジュアリーブランドは自社商品をリセールすることで利益率を40%上げられるようになるという。同様に、リセールを行うだけで商品1つ当たりの売り上げも最大65%増える可能性があるとしている。

 一方で、レンタルビジネスも同様の利益を生み出すことができる。1点のラグジュアリー製品を貸し出すごとに商品1つ当たりの利益率は高まり、同時に高額な商品を購入することのできない新規顧客層の獲得にも繋がる。

 また、インクルーシブを持続可能なラグジュアリーの支柱とするためには、より多様性のある役員を選出することや、単にSNSで商品のPRを行うだけでなく、ブランドと顧客のパイプ役として、メッセージが顧客に響いていないことをブランド側に伝える役目を持つ “シンクフルエンサー(think-fluencers)”、つまり“考えるインフルエンサー”たちと提携することも重要だ。

 リポートでは、2030年に向けた“サステナブルな10年”はすでに始まっていると指摘した上で、1990年代半ばから2010年代初頭に生まれたZ世代の成長にも焦点を当てている。成人したZ世代は環境や社会にいい影響を与えるブランドを評価し、そうでないブランドからは離れていくとされている。新型コロナウイルスのパンデミックによって、こうした購買行動の変化に拍車がかかる形となった。

 また、意識の高い顧客向けに作成されたサプライチェーン・マップには、洋服やアクセサリーに使用されているすべての素材が細かく明記してあり、こうした取り組みはサプライチェーンの地域化、デジタル化、縦割り化などのトレンドを抑えた将来のビジョンとしても注目されている。そして、2030年には循環型ビジネスや使用済み製品の取り扱いに関する詳細な情報の提供も主流になると考えられている。

 また、かつて成功の指標とされていた財務実績は、現在ではサステナビリティに関する評価指標であるESGと合わせて見るべきものだとも考えられている。最近は財務上の利益が高すぎる場合、環境や社会に対する取り組みが引き合いに出されて詳しい調査が実施されており、英国の環境監査委員会(Environmental Audit Committee)が、英ファストファッション「ブーフー(BOOHOO)」に対して繰り返し調査を実施していることなどが例に挙げられる。

 今回のリポートでは、全体を通して“総合的”と言う言葉がキーワードとなっており、ベイン&カンパニーのクローディア・ダルピツィオ(Claudia D’Arpizio)=シニア・パートナーは、「ラグジュアリー業界におけるサステナビリティへの取り組みは、ブランドとしての目的とクリエイティブな展望を再定義することから始まる」とコメントしている。

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