毎年3月8日は「国際女性デー(International Women’s Day)」と制定し、ジェンダー平等に向けて女性の権利向上を喚起する日となっている。アメリカでは3月いっぱいを「女性史月間(Women’s History Month)」と定めており、期間中は日頃の取り組みに加えて女性の歴史や貢献、活動により一層深い焦点を当てる。ファッション業界からは、自信と勇気が湧き出るエンパワーメントを目的としたカプセルコレクションやトークイベント、キャンペーンの数々が登場している。
ファッション業界による女性支援に特化したキャンペーンや、女性によるビジネスを紹介する取り組みなどを行うブランドや企業を紹介する。
■H&M USA
H&Mヘネス・アンド・マウリッツ(H&M HENNES & MAURITZ、以下H&M)のアメリカ法人は、黒人女性が運営するビジネスに焦点を当てて黒人コミュニティーの支援をする非営利団体「バイ・フロム・ア・ブラック・ウィメン(Buy From a Blackwomen)」と1年間にわたるパートナーシップを結んだ。同団体が21年6月に開催する、アメリカで起業など何か新しいことを始めたいと考えている黒人女性に向けた「ザ・ブラック・ウィメン・インスパイア・ツアー(The Blackwoman Inspire Tour)」のスポンサーを務める。
■ギャップ
ギャップ(GAP)は「女性史月間」に合わせて、2007年から続く女性のエンパワーメントプログラム「パーソナル・アドバンスメント&キャリア・エンハンスメント(Personal Advancement & Career Enhancement以下、P.A.C.E.)」のさらなる強化を25年まで行うと発表した。これまで80万人以上の女性が同プログラムに参加しており、22年までに100万人の加入を目指す。
加えて人権やジェンダー平等に焦点を当てたサステナビリティを展開する団体と協力して、「エンパワー@ワーク(Empower@Work)」プログラムを立ち上げた。同プログラムではサプライチェーンにおけるジェンダー平等を目指しており、ギャップの主要工場は全て加入している。2025年までに全てのブランドが持つ工場が加入する予定だ。
■バーバリー
「バーバリー(BURBERRY)」は、現代社会を生きる女性を称えるため、著名人を集めたオンライン対談を開催した。登壇者は「バーバリー」の衣服を身につけて参加し、女性であることで感じる喜びなどを共有。モデルのジョーダン・ダン(Jourdan Dunn)は、「シスターフッドの連帯の中にいられることがうれしい」と語った。2021年に女性であることの体験や気持ちを語り合い、現代社会を生きる上でのヒントなどを提供した。
国際女性デー当日には、若者の就職支援を行う「ザ・プリンスズ・トラスト(The Prince’s Trust)」が立ち上げた女性の自立をサポートするプログラムへ寄付キャンペーンを実施した。「バーバリー」のアイテム1点の購入ごとに、1ポンド(約150円)を寄付した。
■リーバイス
リーバイ・ストラウス(LEVI STRAUSS & CO.以下、リーバイス)は、2010年に開始した「パイオニア・イン・ジャスティス(Pioneers in Justice)」イニシアチブの第3弾を開始した。これまで同取り組みを通じて社会貢献を行うリーダーに焦点を当ててきたが、今回は有色人種の女性と自認するリーダーを募集する。アパレルで働く人を対象に、パンデミックへのサポートやサプライチェーンにおけるジェンダー平等を支援する。
■「ピンタレスト」
幅広いウェブ画像をそろえ、それらをブックマークする機能などを提供するオンラインプラットフォームの「ピンタレスト(PINTEREST)」は、ショップ機能に女性による25小企業をキュレートしたページを公開した。
■「トリー バーチ」
「トリー バーチ(TORY BURCH)」は社会の変化につながるニュースや情報を届ける「アップワーシー(UpWorthy)」と連携して、「エンパワード・ウィメン(Empowered Women)」キャンペーンを開始した。自身のコミュニティーに変革をもたらした5人の女性を取り上げ、その功績を称えた。キャンペーンが続く1年間を通して新しいことに挑戦する女性を随時募集し、毎月選考を行って1人にスポットライトを当て、その女性が希望する非営利団体に5000ドル(約54万円)を寄付する。
■「マイテレサ」
ドイツの高級ファッションEC「マイテレサ(MYTHERESA)」は女性のアーティストに着目し、「アート・フィメール・フューチャー(Arts Female Future)」を立ち上げた。女性のアーティスト4人に焦点を当てて支援を行う。また4人それぞれが選んだチャリティー団体に1万ユーロ(約129万円)を寄付する。
■ユークス ネッタポルテ グループ
大手ECのユークス ネッタポルテ グループ(YOOX NET-A-PORTER GROUP)は、歌手のザラ・ラーソン(Zara Larsson)やコメディアンのインカ・ボキニ(Yinka Bokinni)、チェス選手のアレキサンダー・ボテル(Alexander Botel)、プロスケートボーダーのレティシア・ブフォーニ(Leticia Bufoni)など、さまざまな分野で活躍する女性によるエンパワーメントをテーマにしたオンライントークを開催した。
ほかにも、連帯感を表現した「私がついてるよ(I Got You)」というロゴがプリントされたTシャツや、女性の体の形をした花瓶など、女性が手掛けるアイテムを集めたカプセルコレクションを展開した。売り上げは全て慈善団体「ウィメン フォー ウィメン インターナショナル(Women for Women International)」に寄付する。SNSでは「#PowerToChange」というハッシュタグを作成し、良い世の中に向けて行っていることを投稿するよう促した。合わせて、1投稿につき1ドル(約108円)を寄付する。
■ニーマン マーカス グループ
米百貨店のニーマン マーカス グループ(NEIMAN MARCUS GROUP以下、NMG)は、アパレル業界での女性のエンパワーメントと環境問題へのアクションを行う「ファッション メイクス チェンジ(Fashion Makes Change以下、FMC)」とパートナーシップを結んだ。店頭で買い物をした消費者にFMCへの寄付を募るほか、女性による商品を扱うキャンペーンからの売り上げを「エンパワー@ワーク」の支援に当てる。