諦めたくない私は、決めつけられたくもないのです
「メンズ ツルリ」の開発に携わった社内横断チームには、拍手を送りたいと思います。
> 男性による男性のための新ブランド「メンズツルリ」 メンズ商品=黒白のモノトーンという認識から脱却
この記事中、何度「そうだ!そうなんだよ!!」と思ったことでしょう(笑)。男性向けだからって黒じゃなくて良いし、たとえ男性は皮脂分泌量が多くてもメントール高配合じゃなくても良いですよね。それを否定するつもりはありませんが、それだけじゃなくても良い。ドラッグストア全体を見渡して、「黒や青が多いから、逆に目立つイエロー」や、「欲しいのは、メントールのすっきり感ではなく、“脂の取れたスッキリ感”」との判断に至ったのは、とっても正しい!ランドセルだって自由に色が選べる時代なのだから、メンズビューティだって好きな色をチョイスしたいのであります。
「決めつけないで」という消費者ニーズについては大昔、ナンシー関が「ファンシーじゃない裁縫箱が見つからない」と繰り返し主張して以来「あぁ、なるほど」と思い続けていますが、今も結構ありますよね(笑)。すぐに思い浮かぶのは、以前、このお手紙でも書いた記憶がある「ゴキブリが嫌いだから買うのに、ゴキブリのイラストを描く殺虫剤」とか「キレイにしたいのに、容器の主張が激しすぎるバス&トイレ用洗剤」など。変化球では「マンションポエム」なんかも、「決めつけないで」の一例ではないでしょうか?「広尾に住まうという悦び」(「住む」とか「喜び」じゃない)とか「洗練の頂から、上質を望む」(高級住宅街の高台にあるのでしょう)みたいなヤツ。もはや「待ってました!」という歌舞伎の名台詞のような気もしますが、本気でプロモーションツールと捉えているのなら「いや、そういう理由で住みたいんじゃないんだ」と思う人も多いでしょう(笑)。
最近は、サステナブルを意識したブランドのGWP(Gift with Purchaseの略。いわゆる、買い物のオマケです)や、マス市場に向けてリブランディングするクリーンビューティブランドのパッケージに時々、「決めつけないで」と思ってしまいます。GWPでは天然素材で無漂白のエコバッグ、クリーンビューティブランドはサンセリフ体の控えめなロゴに淡いパステルの容器に納めたマスカラやリップ。仕事柄たくさん見続けると、「1つの正解ではあるけれど、絶対的な正解ではないのに……」なんて思うことがあります。少しずつ環境には意識を向け始めたけれど、エッジーでポップなモノも好き!という人は、少なくないと思うのです。
最近、「決めつけないでくれて、ありがとう!」と思ったのは、マッシュが湘南・七里ガ浜にオープンした「ビープル バイ コスメキッチン」の2号店です。場所柄、そしてオーガニック&ナチュラルコスメの集積ストアというアイデンティティを考えると、エコバッグはナチュラル素材、ドリンクはオーガニックハーブティーって思いがちですが、エコバッグはサーファーも使えるように(不要になった)ポリエチレン由来、そしてヴィヴィッドカラーなラベルのビールも売っています。
「シアタープロダクツ」の武内さんが始めたアップサイクルブランド「ホズバッグ」も、カラフルです。そして、そんなバッグを持っている人がまた、人それぞれでカラフル。そういう時代ですよね。天邪鬼な私は、こういうブランドを選びたい。何かを求めても、別の何かを諦めたくないんです。
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