2018年のオープン以来、東京・渋谷のヘアサロン「レコ」はエッジの効いたヘアデザインと多彩なスタッフ陣で人気を集めている。20年4月には姉妹ブランド「クク」、今年3月には「レコ オーベン」をオープンし、スタッフも30人ほどに増えるなど、勢いは年々増している。内田聡一郎代表に「レコ オーベン」出店の背景と今後の展望を聞いた。
WWD:3店舗目となる「レコ オーベン」をオープンした背景は?
内田聡一郎「レコ」代表(以下、内田):「レコ」と「クク」2店舗体制でやってきて、単純に席数が足りなくなってきたというのがきっかけです。「レコ」と「クク」はかなり近い場所にあり、オペレーションがよく、なるべく3店舗目も近い場所でと考えていたところ、同じビルの2階が空いたので出店を決めました。
WWD:“内田代表のアトリエ”とも表現しているが、「レコ」にとって「オーベン」はどのような位置付けになるか。
内田:「レコ」の2号店であり同じビル内にあるので、大きく差別化するつもりはありませんが、「オーベン」では僕のお客さまを中心に施術して、より上質な空間を提供したいと考えいています。僕の美容師歴も20年ぐらいになり、サロンワークは長年通い続けてくれているお客さまが中心です。「レコ」は10〜20代半ばのお客さまがメインターゲットということもあり、僕の顧客層とのズレも感じていました。「レコ」に通ってくれたお客さまが大人になっても通える場所を作りたいという思いもありました。「個性は好きだけれど、リラックスした空間が心地よくなってきた」というお客さまもカバーしたいですね。「オーベン」は個室を完備し、スパメニューも充実させることでよりエグゼクティブな空間を提供します。
スタッフに会社の将来性を
プレゼンテーションする
WWD:「レコ」オープン時には、“人が辞めないサロン”を掲げていた。店舗数が増えるにつれてスタッフたちも育っている?
内田:4月には新たなスタッフを迎え、30人近くになりました。着々と人数が増え、当初目標としていた形が出来上がりつつあります。若手スタッフが増えたこともあり、「レコ」を統括してもらうためにも1月には小林賢司を店長兼ディレクターに任命して幹部陣の充実をはかりました。組織としての体制も整ってきています。
WWD:スタッフとのコミュニケーションで意識していることはあるか。
内田:僕自身は“叩いてのばす”ような体育会系の教育を受けてきました。それにも良い面はあるとは思いますが、今は否定せずに良いところを伸ばしていこうというムード。自分も最近は無理せずにそれができていると思うし、怒ることはほとんどありません(笑)。同じサロンで働いているのでコアにあるものは近いと思いますが、「クク」のメンバーも含め引き出し方は人それぞれ。多様性がある中で、僕がうまくコントロールして「いろんなタイプがいても良い」「美容師の成功って一つじゃない」と考えながら、成長してもらえたらと思います。
WWD:スタッフそれぞれの個性を伸ばせる環境ができている。
内田:そうですね。働き方も、ライフワークバランスの比率も人それぞれなので。僕の場合は10対0で仕事だけれど、5対5もありだし、年齢やライフステージごとに変化するものだと思うので、自分の型にはめないことも最近意識していますね。
WWD:今後の展望は。
内田: “「レコ」ビル”みたいに全フロアがうちみたいなこともアリですよね。働くスタッフたちもサロンの勢いや“乗っている”空気感を感じれるはず。“会社に将来性がある”ことは僕が一番見せるべき部分だと考えています。「『レコ』にいたら自分もいい感じになれるんじゃないか」という期待値をみんなにしっかりとプレゼンテーションできているか勝負しているところです。
WWD:コロナ禍での出店ということもあり勢いを感じる。
内田:単純にコップの水が溢れそうになったから次を出す、というシンプルな考え方です。人が育たないと意味がないと思うので、基本的には人ありき。一寸先も想像できない中でビジネスしないといけない中、それが一番着実とも考えています。「オーベン」はミニマムに作っていて、顧客に継続的に来店してもらえることがコンセプトです。それでもコップの水が溢れる状況は出てくると思うので、4店舗目や別のブランドを作るなども視野に入れています。