歓送迎会シーズンを迎え、危惧されていた新型コロナウイルスの感染拡大が現実となった。その中で資生堂は「正しい手指の消毒による感染予防」と「手洗いや消毒による手荒れを防ぐハンドケア」を実施する“手守り習慣”の大切さを伝える「資生堂 Hand in Hand Project」を4月30日まで実施中だ。3月中旬からは人気動画クリエーターのKemioを起用し、新型コロナウイルス感染経験者と医療従事者と言葉を交わすインタビュー動画「資生堂 Hand in Hand CALL」をユーチューブやテレビCMで放映し、関心を集めている。
“手守り習慣”の第2フェーズ
「資生堂 Hand in Hand CALL」はKemioが電話インタビューで新型コロナウイルス感染経験者から感染経路や症状だけでなく、隔離期間に感じたことや不安だったことなどを聞く様子を映し出す。医療従事者にも話を聞いて、医療現場で感じていることや感染予防の大切さを伝える。Kemioを起用した理由について、「卒業・入学など人生の節目を迎える期間は外出が多くなるので、若い層に“手守り習慣”の重要性を知ってほしかった」と石川由紀子資生堂ジャパンチーフマーケティングオフィサーは語る。Kemioも「自粛生活が1年以上も続いている中で、自粛疲れもあって日々の手洗い・うがいをおこたってしまうというか、このくらいで大丈夫なんじゃないかと思ってしまっていた。“手守り習慣”というのを今一度考えて取り組んでいけば、少しずつ前の生活に戻っていくのではないか」とコメントする。
手指の消毒は日常化しているものの、この時期を“手守り習慣”の第2フェーズととらえ、昨年末からプロジェクトを実現するためのチーム作りが始まり、1カ月弱で小売店にも協力を得た大きな取り組みを実らせた。
プロジェクトのきっかけは魚谷社長のメール
同プロジェクトのきっかけは、魚谷雅彦資生堂社長兼最高経営責任者(CEO)のメールだった。同社は昨年6月から消毒液を生産し医療施設や特定の地域に販売していたが、12月には全国で販売できるほどの供給体制を構築。そこで魚谷社長兼CEOから「消毒液で利益を得るのではなく、社会に役立つこと、利益を医療従事者に還元できないか」と投げかけがあったという。石川チーフマーケティングオフィサーが手を挙げ1月6日にキックオフした。営業、マーケティング、PR、リスクマネージメント、ファイナンスなど各部門からメンバーが集結。「一つのプロジェクトにこれだけのメンバーが集まるのは稀なケース。短期間でパフォーマンスを発揮するには必要な人材が集まった」(石川チーフマーケティングオフィサー)。それぞれが通常の業務と並行して週2回(通常の新規プロジェクトは週1回ペース)の定例会議を実施。メンバーは各部門の要職者だったこともあり、迅速かつ完成度高く物事が進み、2月1日に「資生堂 Hand in Hand Project」にスタートし、公式サイトもオープンした。
協力の和が広がり展開店舗は600から1500店舗に拡大
医療従事者への感謝と敬意を届ける意味も持つ「資生堂 Hand in Hand Project」の対象商品は「S 手指消毒用エタノール液(指定医薬部外品)」や「資生堂 ハンドクリーム N」など全21アイテム。これら商品の利益を医療現場に寄付するものだが、プロジェクトの認知拡大と商品を販売するには小売店の協力が欠かせなかった。「通常半年かけて商談を行うが営業担当が奮闘し2週間で600店が参画してくれた」。その後もプロジェクトに共鳴する小売店が増え、現在では1500店舗まで拡大する。「今回のプロジェクトは社内横断、容器などのサプライヤー、小売店、お客さまがハンドインハンドで協力して成立したもの。その思いを医療現場に届けたい」。また、「不透明な時代にスピード感をもって行動することが重要。自主的に部署を横断し自主的に動き完成するプロジェクトは今後増えていくだろう」と述べた。