2月末~3月上旬まで開催された2021-22年秋冬シーズンのミラノとパリのファッション・ウイークでは、日系モデルの活躍が見られました。海外渡航が難しい中、ヨーロッパ拠点のアジア系モデルに活躍のチャンスが多く与えられたようです。ここでは今季、さまざまなブランドに起用され躍進したモデル4人を紹介します。
「ルイ・ヴィトン」など12ブランドに出演
日系モデル勢をけん引する美佳
日系モデル勢をけん引しているのは日本とフランスのハーフ、美佳さんです。ミラノで「アルベルタ フェレッティ(ALBERTA FERRETTI)」「フェンディ(FENDI)」「デルコア(DEL CORE)」「エトロ(ETRO)」「トッズ(TOD’S)」「サルヴァトーレ フェラガモ(SALVATORE FERRAGAMO)」で連日見かけた後、パリでは「クレージュ(COURREGES)」「ロンシャン(LONGCHAMP)」「コペルニ(COPERNI)」「ジバンシィ(GIVENCHY)」「ランバン(LANVIN)」「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「アミ アレクサンドル マテュッシ(AMI ALEXANDRE MATTIUSSI)」に起用されていました。この他、パリコレ会期中に出版したアメリカ版「i-D」マガジンの最新号の表紙や、アメリカ版「ヴォーグ(VOGUE)」のエディトリアルに登場していて勢いを感じます。
「ドリス ヴァン ノッテン」など11ブランドが起用
2シーズン目の樋口可弥子
先シーズンに海外コレクションデビューを果たした樋口可弥子さんに注目している人は多いはず。2シーズン目となった今季も、見かけない日がない大活躍ぶりでした。ミラノの「フェンディ」「ヌメロ ヴェントゥーノ(N21)」「デルコア」「ブルマリン(BLUMARINE)」「スポーツマックス(SPORTMAX)」「サルヴァトーレ フェラガモ」「フィロソフィ ディ ロレンツォ セラフィニ(PHILOSOPHY DI LORENZO SERAFINI)」、パリの「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」「ジャンバティスタ ヴァリ(GIAMBATTiSTA VALLI)」「バルマン(BALMAIN)」「アミ アレクサンドル マテュッシ」と計11ブランドに出演しました。
今季は多くのブランドがランウエイショーだけではない、さまざまな手法を凝らした映像を発表しましたが、樋口さんが最も印象に残っているのは47人のダンサーとモデルがパフォーマンスを行った「ドリス ヴァン ノッテン」だといいます。樋口さんは、東京からベルギーに入国後、2週間の自主隔離を経て撮影に参加したそう。「普段とは違う体の動きで服を表現しました。短い撮影時間でしたが、高い集中力を維持しながら世界観に入り込んだことで、泣きそうなくらい感情的になっている自分自身に驚きました。自分は服を通して表現をするのが大好きなんだなと実感した瞬間でもありました」と語ってくれました。
また、前シーズンとは異なる学びを得たようです。「1シーズン目とは違って、大体の仕事の流れが把握できていた分、不安に感じることが多かったです。先シーズンは全てが新鮮で気づいたら終わっていたのですが、今季はずっと不安でした。でも、ファッション・ウイーク中盤にさしかかる頃には、大きいブランドの仕事と仕事をするという実績にこだわるのではなく、素晴らしいプロフェッショナルの方々と関われる喜びや新たな発見を大切にしようと切り替えられたのが学びでした」。これから樋口さんはパリを拠点に活動していくので、慣れない海外生活や新たな挑戦によって、さらに成長していく姿が見られるのではないかと期待しています!
「エルメス」や「ヴァレンティノ」に登場
台湾と日本のハーフモデルの中野悠楽
そして今季、新たに2人の日系モデルも活躍しました。1人目は、台湾と日本のハーフで2001年長野県生まれの中野悠楽さん。海外のコレクションデビューは、2020-21年秋冬の「GCDS」です。今季は1月に開催されたメンズ・ファッション・ウイークから3月のウィメンズまで、ミラノとパリで何度も中野さんを見かけてずっと注目していました。メンズの「フェンディ」「エトロ」「エルメス(HERMES)」、メンズとウィメンズを合同で見せた「ヌメロ ヴェントゥーノ」「スンネイ(SUNNEI)」「ヴァレンティノ(VALENTINO)」「ランバン」にも起用されていました。
モデルを始めたきっかけは、ニューヨークでモデル活動をしていた幼なじみに勧められたことだそうです。多くのショーに出演できた理由を聞くと、「東京で行われた『ルイ・ヴィトン』2020年春夏コレクションのショーに出演した直後にヨーロッパで活動を始めたため、タイミングが良かったのかも」と分析します。現在はスーツケースだけを持って各国を点々としながら、ヨーロッパに拠点を置いています。ジェットセッターなライフスタイルで世界を飛び回り続け、コウヘイさんのようなモデルを目指しているとのこと。
「フェンディ」「ディオール」が抜擢
行動力ある次世代モデルのハナカ
もう一人は、2000年生まれ新潟県出身で、日本、イギリス、アメリカのミックスのハナカさんです。海外のコレクションデビューを飾ったのは、2020年春夏シーズンの「ニナ リッチ(NINA RICCI)」。今季はミラノとパリに挑戦して、「フェンディ」「デルコア」「ヴァレンティノ」「ディオール(DIOR)」などビッグメゾンに起用されました。
モデルになったきっかけは、高校3年生で進路に悩んでいたとき、大好きなファッションに携わる仕事に就きたいと思い自らモデル事務所ドンナに履歴書を送ったことでした。そんな彼女の行動力は今季の活躍にもつながっています。ヨーロッパ各国が厳しい状況下でのファッション・ウイークとあって、今季はモデルだけでなく多くの業界人が現地入りしませんでした。しかし、東京拠点のハナカさんはイタリアへと早々に入国し、2週間の自主隔離を経て初めてとなるミラノコレ、2回目のパリコレに挑みました。
そんな彼女が最も印象に残っているのは、「フェンディ」のショーだそう。「隔離後、キャスティングディレクターに会いに行き、最終決定が出るまで計5回『フェンディ』のショールームへ出向きました。本番の日は、いつもインスタで見ているヘアスタイリスト、メイクアップアーティスト、スタイリスト、モデルたちと同じ現場にいて『私、今すごいところにいる!』と感激のあまり泣きそうになりました。キム・ジョーンズ(Kim Jones)さんと日本語でお話ししたのも貴重な思い出です」。自ら行動し、自らの手で夢を掴み、憧れの人たちと一緒に仕事をしたシーズンとなりました。目標は「世界中で活躍しているクリエーターの方々に名指しで『ハナカと仕事がしたい』と思ってもらうこと」。持ち前の行動力で経験を重ねて、国内外で活躍する姿が見たいです。