J.フロント リテイリングは13日、2024年2月期を最終年度とする新中期経営計画を発表した。新型コロナウイルスの影響で本業の百貨店事業が不振に苦しむ中、不動産事業に成長投資をシフト。非商業用途の施設開発・運営にも乗り出し、新たな成長のドライバーとする。同期末において営業利益403億円、ROE(自己資本利益率)は7%を目指す。
不動産開発においても事業子会社の大丸松坂屋百貨店、パルコのリソースを最大限に生かす。「商業コンテンツのプロデュース能力」「取引先やクリエイターをパートナーとした開発」「百貨店外商客を含む強い顧客基盤」などを強みとした大型複合施設の開発に取り組む。既存施設の再開発では、百貨店とパルコの規模を適正化する一方、ここでも非商業用途を高めて不動産関連収益の割合を増やす。
戦略の中心となるのは、百貨店とパルコが隣接する大阪・心斎橋エリアや名古屋・栄エリアなどの都市部だ。大丸心斎橋店と一体となる形で20年11月オープンした心斎橋パルコは、両店の顧客層の幅が拡大し、1〜2階のラグジュアリーや6階カルチャーフロアが好調に推移するなどすでにシナジーが生まれている。栄地区では大丸松坂屋百貨店が取得した駅前一等地の再開発構想が進む。
20年11月にはパルコを完全子会社化し、大丸松坂屋百貨店の不動産事業をパルコに移管・一元化して、商業用不動産の開発に向けて体制を整えた。「今後は(不動産開発において)商業用途以外のジャンルにも領域を伸ばして取り組んでいく」と好本達也社長。地域一帯の魅力創出によりシナジーを生み出す「アーバンドミナント戦略」を加速する考えだ。「われわれが最も得意とする都心エリアをベースに、周辺にある不動産をどう活用するかを考えていきたい」。
既存のリアルの売り場では、強化カテゴリーを中心にメリハリのついた面積配分やコンテンツ強化が課題となる。百貨店では「自主編集売り場の面積半減」「ライフスタイル型コンテンツの拡充」「体験型コンテンツの導入」を推進。パルコでは女性のためのウェルネスサービスやコミュニティ型ワーキングスペースの設置などを進める。
同時に、オンラインチャネルを活用する「OMO戦略」にも注力する。3月にスタートした衣料品のサブスク「アナザーアドレス」はレンタルを間口として店舗への集客をもたらすウェブ完結型のサービスで、4月13日現在までで会員登録人数が約3700人と計画以上で推移する。年度内にはビューティーアドバイザーのオンライン接客機能などを備えたコスメECの開設も予定する。「われわれのデジタル戦略は、単にECの売り上げを増やすことを目指すものではない。大事なのはデジタル上で販売員とお客さまのコミュニケーションが生まれること。あくまで(百貨店の強みである)『ヒト』が中心のサービスになる」.
コスト構造改革では効率的な運営による人員削減、販促費の削減により、100億円以上の固定費削減を目指す。