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美容室の新たな通い方を提供 ヘア業界の課題解決を目指す「メゾン」の鈴木代表【ネクストリーダー2021】

 「メゾン(MEZON)」は、美容室のシャンプー・ブローやヘアケアサービスを月額定額で提供するサブスクリプションサービスだ。2018年2月から展開し、加盟店は首都圏を中心に全国約1000店にまで拡大。カット・カラーを軸に運営する従来のサロンの在り方に対し、ユーザーはさまざまなメニューをより手軽に試せるようになり、美容室にとってもリピート率向上に貢献している。ユーザーと美容師どちらに対してもメリットをもたらし、新しい“美容室の通い方”を提案する画期的なシステムだ。そんな「メゾン」を率いる鈴木みずほジョシー(JOCY)代表が、「WWDJAPAN NEXT LEADERS 2021」に選出された。

WWD:美容室での勤務経験がない鈴木代表が、このサービスを思いついた経緯は?

鈴木みずほジョシー代表(以下、鈴木):前職ではプレゼンを行う機会が多かったが、正直苦手だった。ところがある時美容室でシャンプー・ブローを受けてから臨んだら、いい結果を出せた。その時に「私は美容室で自信ももらっている」と気が付き、美容室をもっと気軽に通える場所にしたいと考えた。

WWD:目新しいサービスだが、どのように加盟店を増やしたのか。

鈴木:このサービスは美容室の協力が重要なので、最初から「どうしたら協力してくれますか」と美容師を巻き込んだ。サービス導入の営業ではなく、金額も含めて要望を聞き、ビジネスモデルを一緒に構築した。

WWD:美容室と話す中で、どのような経営課題が見えた?

鈴木:集客は大きな課題。美容室のお客のリピート率は約15〜30%と低く、新客の獲得はクーポン券に頼ることが多い。そうするとお客も価格で美容院を選ぶようになり、次回以降も新客向けクーポンを使い、別の美容室に行く……という負のスパイラルが起こる。一方で「メゾン」のメインユーザー層である30〜40代は価格より質を重視する。初めての美容室でカット・カラーを受けるのは、失敗が不安だという意見が多かった。だから「メゾン」は手軽なメニューで美容室をお試しでき、信頼を得て再来してもらえるように設計した。カット・カラー以外の収益は美容室のメリットも大きい。女性は年平均4.2回美容室に行くが、美容室は直近10年で7万軒も増えて、25万軒に達した。膨大な美容室がカット・カラーだけでお客を奪い合うのは限界がある。

WWD:美容室が増え競争が激化しても、なぜ業界は変わらない?

鈴木:要因はさまざま。美容室はもっと柔軟に、新しい収益基盤を作るべきだと感じる。それは働き方にも当てはまる。美容室は女性経営者が少ないが、その要因の一つに出産・育児が挙げられる。出産と産休で3年ほど仕事から離れれば、技術もトレンドも大きく変化し、復帰が難しい。ヘッドスパやトリートメントであれば専門職として新しい働き方も模索できるのでは、と思う。

WWD:ローンチから3年、順調に拡大しているように見える。大変だったことは?

鈴木:1つは資金調達。投資家の多くが50代以上の男性でサービスへの理解を得るのが難しく、自分まで事業内容に自信を持てない時期があった。2つ目は新型コロナ禍。昨年4月の緊急事態宣言では、ユーザーに一時解約を促進し、調達したばかりの資金がみるみる減っていった。ジョシーとしては新規事業も計画したが、結局全て白紙に。新事業は私たちがすべきことなのか、私たちが提供したい価値に近づくことかと考え直した結果だ。経営者としては一番勇気がいる決断だったが、今はコロナ以前の8割までユーザーが戻っている。

WWD:これからの市場をどう見据える?

鈴木:今後10年でメガヒットするサービスはなかなか生まれないのではないか。人の価値観やライフスタイルは多様化し、顕在化した課題を解決するサービスもほとんどそろった。その中で生まれるのは、細分化された価値観に合った商品、少数に愛されるサービスだろう。私たちは新しいライフスタイルを作ることで、生き方の選択肢を増やしたい。

【推薦理由】
 日本の美容室の数は約25万軒あり、コンビニよりも多いとされる。近年はクーポンサイトの台頭などで価格競争が激しくなる中、美容室にとってリピート顧客の定着や収益率が高いサービスの提供は課題とされてきた。一方ユーザーからすると、トリートメントやヘッドスパなど、これまでカット以外の目的で美容室に通うことはハードルが高いとされてきた。そこで「メゾン」はカット・カラー以外のメニューを定額で通えるようにすることでユーザーはより多くの美容室を気楽に通えるようにした。コロナ禍でヘアサロンも打撃を受ける中で、美容室の新たな通い方を提案している。またユーザーにも、美容室にもメリットがある仕組みとして、業界にポジティブなチェンジをもたらしている。

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