「無印良品」を展開する良品計画は、地方や郊外での出店を加速する。これまで大都市の商業施設や繁華街を主戦場にしてきたが、より消費者の生活圏に近い場所に店舗を増やす。スーパーマーケットの隣接地や店舗内を有力な出店先にする。
14日にオンラインで行われた決算説明会(2020年9月〜21年2月期)で、24年8月期を最終年度とした中期経営計画の骨子を発表した。登壇した松崎暁社長は「日本と中国大陸、台湾、タイで出店戦略と店舗機能を刷新する」と話した。最終年度に日本で純増100店舗を出店できる体制を作る。国内店舗数は16年2月期末が414店舗、21年2月期末が443店舗だった。緩やかだった出店ペースが一気に上がることになる。
出店先として地方都市やベッドタウンの生活圏を開拓する。スーパーマーケットやホームセンターのような近隣商圏に向けて営業する店舗の隣接地、あるいはスーパーマーケット内に出す。立地環境によって売り場面積や商品構成も柔軟に変えていく。
「無印良品」は衣料品、日用品、雑貨、食品など7000品目以上の幅広い生活必需品を扱っているため、アパレル専門店やインテリア専門店などに比べて消費者の来店頻度が高い特徴を持つ。さらにこの数年は、購入頻度が高い食品を戦略的に強化してきた。消費者が週に何度も利用するスーパーマーケットとの買い回りが期待できる。
すでに一部で検証を進めている。19年4月には石川県野々市市に初のロードサイド店舗を開いた。北陸を地盤にするスーパーのアルビスと組んで、スーパーの隣接地に約2000平方メートルの大型店を構える。20年7月には新潟県・直江津のGMS(総合スーパー)跡地に日本最大店舗をオープンした。同店は商品を詰め込んだバスで山間部での移動販売も行なっている。東京都板橋区の光が丘団地内には小型店を出店し、忙しい子育て世代や遠出のできないシニア世代の需要に応えている。
同社は近年、地域に根ざした「個店経営」を掲げてきた。生活圏への出店拡大は、画一的なチェーンストアではなく、地域の課題に商品とサービスで貢献する新しいタイプの小売業モデルの模索といえる。