日本で「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」などのブランドを運営するLVMHジャパンは4月15日、女性の再就職とキャリアアップを支援する「ME LVMH JAPAN クライアント・アドバイザー・プログラム」をスタートした。対象は、これまで結婚や出産、育児、介護などの理由で離職せざるを得なかった女性や性自認が女性の人で、ファッション・ビューティ業界の業界経験者以外も受け付ける。ファッション、コスメティックス、ウオッチ&ジュエリー販売で、再就職に必要な専門的知識の学習機会とトレーニングのサポートを無償で行い、生活支援金として月10万円を支給する。15日に、さまざまな背景を持つ12人の第1期生がプログラムの受講を開始した。
同プログラムでは、50年以上に渡ってファッションと美容業界に人材を輩出してきた学校法人日本教育財団のモード学園と、国際ファッション専門職大学と提携する。両校の校舎である新宿のコクーンタワーでトレーニングを実施。カリキュラムには、ファッションとビューティの基礎知識の座学をはじめ、接客、メイク、スタイリングの実践授業、国内外のビジネスリーダーの講義などが含まれている。またLVMH傘下ブランドやスペシャリストを招いて、インターンシップとして店舗での実務研修も予定する。初回のプログラムでは、「ブルガリ(BVLGARI)」「セリーヌ(CELINE)」「クリスチャン・ディオール・クチュール(CHRISTIAN DIOR COUTURE)」「フェンディ(FENDI)」「フレッド(FRED)」「ゲラン(GUERLAIN)」「ロエベ(LOEWE)」「ロロ・ピアーナ(LORO PIANA)」「ルイ・ヴィトン」「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」「パルファン・クリスチャン・ディオール(PARFUMS CHRISTIAN DIOR)」「タグ・ホイヤー(TAG HEUER)」の12ブランドが参加している。受講は1年間で、トレーニング終了時には卒業証書が授与されるほか、同社傘下ブランドでの就職機会を得ることが可能だ。
15日に開かれた記者会見で、ノルベール・ルレ(Norbert Leuret)LVMHジャパン社長は「日本には仕事の復帰について、悩んでいる女性たちがたくさんいる。このプログラムでは、そのような方たちと一緒に答えを見つけて行きたい。私たちは業界に種をまくことで、社会に貢献できることは大きいと考える。他企業に向けてメッセージを送るのであれば『Do it!、頑張れ!』。悩んでいる人たちに答えられるよう、革新的にもっと考え方の蓋を開けて、アクションを起こしてほしい。多くの人にファッションやビューティの世界を再発見してもらい、仕事かプライベートのどちらかを選ぶのではなく、2つを一緒にバランスを取っていける世の中になっていってほしいと思う」と話した。
LVMHジャパンのステファン・ヴォワイエ(Stephane Voyer)人事担当シニア バイスプレジデントは、「日本で働く女性の約3分の2が結婚や出産で離職し、経済危機やリストラの影響も最初に受けやすい。多くの女性たちが不公平にも、育児や介護によってキャリアを諦めなければならないことがあり、そのブランクによって、スキルが失われてしまうことがある。ヨーロッパでも行ってきたこのMEプログラムを日本で実施するにあたり、理念に共感いただいた日本教育財団に協力いただけることになった。プロジェクトは小さなステップでスタートするが、今後大きく成長させていきたい」と言う。
日本教育財団の後藤京子・理事は「LVMHジャパンから2020年5月にお声がけいただき、約1年をかけて受講内容を考えてきた。女性に新しい環境を作り出していく試みの一助となれることを期待している。設立3年目になった国際ファッション専門職大学は“社会人の学び直し”を一つの目標にしてきた。今回の取り組みを通して、日本でも女性だけでなく、一度社会に出た人たちが再び学び直しができる土壌が生まれることを願っている」と説明した。