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「退場してくれるのを待つしかない」人は減るのか? エディターズレター(2021年4月19日配信分)

※この記事は2021年04月19日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

「退場してくれるのを待つしかない」人は減るのか?

 最近読み終えたのは、「これからの男の子たちへ:『男らしさ』から自由になるためのレッスン」(太田啓子著・大月書店刊)です。飛ぶように売れた本らしいので、ご存知の方も多いでしょう。2人の男の子を育てる弁護士ママが、性差別に怒りを燃やしながら、ジェンダーバイアスや性差別・性暴力に繋がりかねない「男らしさ」の呪いに男の子がかからないようにすべく、大人は何ができるか考える書籍と説明しておきましょう。以前「グッチ」のアレッサンドロ・ミケーレが、「家父長制度の崩壊」という難しいテーマで、「男性もまた、男性らしさに縛られて苦しんでいる。そこから解放されるには、幼年時代に戻るしかない」と考え、ジェンダーなんか気にせず、子ども服を自由にコーディネートしたスタイルを発表したシーズンを思い出して、興味がわいたのです。

 太田ママは、例えば「ドラえもん」におけるしずかちゃんの入浴シーン、あの「のび太さんのエッチ~!!」という場面に疑問を呈します。お風呂を覗かれるって、おおごと。とても「のび太さんのエッチ~!!」で済む話ではないし、その数分後に二人が仲良く遊んでいるなんてありえないというのです。彼女は、「マンガだから」で片付けてはいけないと説きます。それを見た男の子が、性暴力を「●●くんのエッチ~!!」と言われる程度、その後、また仲良く遊べる程度の“軽いこと”だと思ってしまう危険性があるからです。なるほど、この世界には、そんな落とし穴がいっぱいありそうな気がしますね。

 と、書籍は面白い話の連続で、「ホモソーシャル(例えば、新歓コンパでノリで男子が全裸になるなどの、当事者次第では「生きづらさ」を覚えるような男性同士の絆、と定義しましょう)は、確かに、こうやって増幅するかもなぁ」とか「『男の子だから』で片付けちゃうママにも責任があるのか」などなど多くを学びましたが、一番面白かった、いやショックを受けたのは、太田ママも、書籍の中で対談した小島慶子さんも、こういう考えが理解できない人は一定数存在していると認め、彼らの考えを変えることは既に諦め、「退場してくれるのを待つしかない」と公言して憚らない(特に小島さんw)ところです。

 そりゃ私だって「早く退場してくれないかなぁ」と思う人が、全くいないワケではありません。でも、そんなことを話すのは、グチる時くらい。書籍の中で「退場してくれるのを待つしかない」と言うのは、なかなかの勇気と度胸です。そう言えるようになるくらい、戦い、疲れ、結果諦めたのでしょう。価値観や社会を変えるとは、それくらい大変なことなのだと改めて実感しました。

 そこで思い出したのは、川島蓉子さんの話です。彼女は「WWDJAPAN」の連載で、アフターコロナの世界は「元に戻る」とは考えておらず、「『戻っていいこと』もあれば、『変えていいこと』もある。そして、世の中がこんな声高に『変わっていいよ』と言ってくれることって、そうはないのではないでしょうか?」と記します。なるほど。今は「変わらなくちゃいけない時」ではなく、「変わっていい時」なのかもしれません。

 「退場してくれるのを待つしかない」と思われている人は、今を、どう捉えているのでしょうか?「変わっていい時」と捉えてくれるなら、変われて、退場を待たれる身から脱却できそうな気がします。すると「退場してくれるのを待つしかない」人は減り、結果、太田ママや小島さんにもハッピーな世の中が早く訪れるのでしょうか?そんなことを考えました。

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