「MSCHF」とラッパーのリル ナズX(Lil Nas X)がコラボアイテムとして発売したスニーカー“サタン シューズ(Satan Shoes)”が、「ナイキ(NIKE)」の“Air Max 97”を無許可でカスタマイズしたものだったとして、「ナイキ」が「MSCHF」を相手取り商標権侵害などで提訴していた件で、両者の和解が成立した。
「ナイキ」によると、「MSCHF」が「“サタン シューズ”および“ジーザス シューズ(Jesus Shoes)”を自主回収し、購入者から正規の販売価格で買い戻すこと」で和解に合意したという。“ジーザス シューズ”は、“サタン シューズ”同様、「MSCHF」が2020年に「ナイキ」のスニーカーにヨルダン川の聖なる水を詰めてカスタマイズしたスニーカーだ。
今回問題の発端となった“サタン シューズ”は、「ナイキ」の“エアマックス 97”をベースに、五芒星のモチーフや、「LUKE 10:18(ルカによる福音書10章18節)」という文字が付されている。10章18節には、悪魔が天から落ちる描写が含まれている。また、赤いソールには、赤いインクと「MSCHF」のデザインスタッフの血液1滴が詰められているという。666足限定で製作したうちの665足を1018ドル(約11万円)で販売したところ、即時完売した。
聖書の内容を着想源とした“サタン シューズ”はSNS上で賛否両論を巻き起こし、無関係の「ナイキ」に批判のコメントが寄せられた。それを受け、「ナイキ」は「リル ナズ Xおよび『MSCHF』とは無関係だ。『ナイキ』がこのスニーカーをデザインおよび販売した事実はなく、このスニーカーを支持していない」とコメント。“サタン シューズ”の発売の翌日には商標権侵害や虚偽の原産地表示、不正競争防止法違反などで提訴した。これを受けて「MSCHF」は「白壁のギャラリーに守られるのではなく、批判されるシステムの中で生きるアート作品を作っている」と声明を発表。「これまで一貫して報道機関に説明してきたように、われわれは『ナイキ』と関係がない。今回の『ナイキ』が取った行動に非常に驚いている。『ナイキ』の代理人から書状を受領してすぐに連絡を取ったが返答はなかった。『MSCHF』は表現の自由を強く信じており、私たちや私たちのような他のアーティストが今後も活動を続けていくこと以上に重要なものはない」とコメントした。
和解について「MSCHF」の代理人は、「1分足らずで完売した“サタン シューズ”によって、一部のブランドで見られるコラボレーション文化のばかばかしさや不寛容に対する悪質さを指摘することを意図していた。666足のシューズは個別に番号が付されている芸術作品で、どこに飾られようとも、平等とインクルージョンの理想を表現し続けるだろう」とコメント。今回の一件で「すでに芸術的な目的は達成された」とし、「この訴訟を終わらせて新たな芸術的・表現的プロジェクトに時間を割くための最善の方法」と認識していると続けた。