米国のアパレルおよび小売業界は引き続き厳しい状況にあるが、2020年10~12月期はホリデー商戦もあり、業績は少しずつ回復している。しかし中国を中心としたアジア地域は好調だったものの、欧州は新型コロナウィルスの感染再拡大を受けて再びロックダウンに踏み切った国もあり、回復が遅れている状態だ。20年通期の決算情報を中心に、主な米系ファッション企業の状況を解説する。
「ギャップ」「バナナ・リパブリック(BANANA REPUBLIC)」「オールドネイビー(OLD NAVY)」などを擁するギャップ(GAP)の2021年1月通期決算は、売上高が前期比15.7%減の138億ドル(約1兆5042億円)、純損益は前年の3億5100万ドル(約382億円)の黒字から6億6500万ドル(約724億円)の赤字となった。
ブランド別の売上高では、「オールドネイビー」は同5.6%減の75億3600万ドル(約8214億円)、「ギャップ」は同26.8%減の33億8800万ドル(約3692億円)、「バナナ・リパブリック」は同42.4%減の14億6200万ドル(約1593億円)だった。
四半期ベースで見ると、20年11月~21年1月期(第4四半期)の売上高は前年同期比5.3%減の44億2400万ドル(約4822億円)、純損益は前年同期の1億8400万ドル(約200億円)の赤字から2億3400万ドル(約255億円)の黒字に回復している。ブランド別では、米国とカナダが好調だった「オールドネイビー」が同4.8%増の23億7500万ドル(約2588億円)と増収だった。「ギャップ」は同18.6%減の10億8800万ドル(約1185億円)、「バナナ・リパブリック」は同31.6%減の5億400万ドル(約549億円)だった。
ソニア・シンガル(Sonia Syngal)=ギャップ最高経営責任者(CEO)は、「未曾有の事態となった20年はこれまでにないほど苦戦したが、長期的な成長を目指すべく社員一丸となって尽力した。アクティブウエアやフリースなど、時流にマッチしたカテゴリーに強いことも奏功した。危機的な状況はチャンスでもある。中期計画の“パワープラン2023”を実行し、21年は利益を上げてさらに成長したい」と語った。
「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」などを擁するPVHコープ(PVH CORP)の21年1月通期決算は、売上高が前期比27.6%減の67億9870万ドル(約7410億円)、純損益が前年の4億1730万ドル(約454億円)の黒字から11億3610万ドル(約1238億円)の赤字だった。
ブランド別に見ると、「トミー ヒルフィガー」の売上高は同22.8%減の36億3640万ドル(約3963億円)、「カルバン・クライン」は同28.0%減の26億3830万ドル(約2875億円)だった。販売チャネルでは、自社ECの売り上げが前年と比べて69%増と非常に好調で、売上高全体の25%近くを占めるようになっている。これは前年の倍程度だという。
四半期ベースでは、20年11月~21年1月期(第4四半期)の売上高は前年同期比19.5%減の19億9600万ドル(約2175億円)、純損失は前年同期から970万ドル(約10億円)改善して5770万ドル(約62億円)の赤字だった。ブランド別では、「トミー ヒルフィガー」は同16.0%減の10億9640万ドル(約1195億円)、「カルバン・クライン」は同16.5%減の7億8120万ドル(約851億円)だった。中国市場は好調だったものの、ホリデーシーズンに再び外出規制が行われた欧州では70%、カナダでは同75%の直営店が一時休業していた。
同社のステファン・ラーソン(Stefan Larsson)CEOは、「第4四半期は欧州で再びロックダウンが実施されたにもかかわらず、ほぼ予想通りの業績を上げることができた。危機的な状況の中、尽力してくれた世界中の従業員に心から感謝している。今後の展望としては、引き続き主力ブランドである『カルバン・クライン』と『トミー ヒルフィガー』に注力しつつ、カジュアルウエアやECなどをさらに強化していく」と述べた。
リーバイ・ストラウス(LEVI STRAUSS & CO.) の20年11月通期決算は、売上高が前期比22.7%減の44億5300万ドル(約4853億円)、純損益は前年の3億9500万ドル(約430億円)の黒字から1億2700万ドル(約138億円)の赤字となった。
20年9~11月期(第4四半期)では、売上高が前年同期比11.6%減の13億8600万ドル(約1510億円)、純利益は同40.6%減の5700万ドル(約62億円)だった。
同社のチップ・バーグ(Chip Bergh)CEOは、「これまでにない逆境の中、予想以上の結果を残すことができた。コスト構造やキャッシュマネジメントを見直し、機敏に対応できるようにしたことが成果につながった。今後も『リーバイス』というアイコニックなブランドの存在感をさらに高めるべく尽力し、顧客とのエンゲージメントを高め、急激に成長しているデジタルをいっそう強化することで、より強くて利益性の高い企業になれるものと確信している」とコメントした。
ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)の20年10~12月期(第3四半期)決算は、売上高が同18.1%減の14億3280万ドル(約1561億円)、純利益は同64.1%減の1億1980万ドル(約130億円)だった。
「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」「ヴァンズ(VANS)」「ティンバーランド(TIMBERLAND)」などを擁するVFコーポレーション(VF CORPORATION)の20年10~12月期(第3四半期)決算は、売上高が同5.8%減の29億7154万ドル(約3238億円)、純利益は同25.3%減の3億4724万ドル(約378億円)だった。
「コーチ(COACH)」「ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)」「スチュアート・ワイツマン(STUART WEITZMAN)」などを擁するタペストリー(TAPESTRY)の20年10~12月期(第2四半期)決算は、売上高が同7.1%減の16億8540万ドル(約1837億円)、純利益は同4.0%増の3億1100万ドル(約338億円)だった。
同社のジョアン・クレヴォイセラ(Joanne Crevoiserat)CEOは、「大変な逆風の中、増益という予想以上の結果を残すことができて非常に誇らしく思っている。これには消費者のニーズにフォーカスして全てのブランドで新たな顧客を獲得したことや、ECおよび中国市場での売上増が貢献した。いまだ社会情勢は不透明だが、競争力をさらに高めることで長期的かつ持続的に成長できるものと楽観視している」と述べた。