新型コロナウイルスの第4波を受けて、大阪府、兵庫県、東京都に3度目の緊急事態宣言が発令される見通しになった。休業要請の対象に百貨店やショッピングセンター(SC)など商業施設が含まれており、小売関係者に動揺が広がっている。昨年の1度目の緊急事態宣言による休業とその後の消費低迷の痛手が残る中、追い討ちをかけられる。
21日午前時点では大阪府や東京都の休業要請の中身が明らかになっていないため、百貨店やSCは「正式な要請が分かり次第、議論する」(三越伊勢丹ホールディングス)と口とそろえるにとどまる。だが、あるSCの担当者は「要請が出れば、従わざるを得ない。この1年、私たちも取引先も感染防止策を講じて、ギリギリのところで踏ん張ってきた。再び営業できなくなる影響はあまりに大きい」と無念さをにじませた。
百貨店は昨年の緊急事態宣言に伴う1〜2カ月休業によって、全国売上高(日本百貨店協会加盟企業の合計)が4月で前年同月比72%減、5月で同65%減と壊滅的な打撃を受けた。コロナ前から続く衣料品の構造不況に拍車がかかり、大手アパレルメーカーの従業員や売り場のリストラを招く事態になった。今回も長期間の休業を余儀なくされれば、従業員への補償、家賃交渉、在庫の過多など、あらゆる問題が浮上する。
日本百貨店協会は15日付で、大阪府と政府に緊急事態宣言が発令された場合に、休業要請から百貨店を外すよう要望書を出した。同協会の村田善郎会長(高島屋社長)は19日に読売新聞のインタビューに応じ、行政の要請にはしっかり応えるとしながらも「食料品をはじめ、百貨店には必要ものがたくさんあり、一つの生活基盤になっている。百貨店は単独で営業できるわけでなく、取引先の雇用を守り、経済を殺さない思いもある」と語った。
また全国のSCが加盟する日本ショッピングセンター協会も20日付で小池百合子・東京都知事宛てに要望書を提出した。「休業要請を拡大せざるを得なくなった場合でも、衣食住という生活に必要な商品を消費者に提供し続けることができるような措置を検討する」ことを求めている。