パンデミック以来1年以上にわたって在宅勤務を推奨してきたネットフリックス(NETFLIX)は、米国の祝日である9月6日の“労働者の日”以降は、オフィス勤務に戻るよう従業員に通達した。同社には2020年の時点で9000人超の正社員が在籍しているが、この件に関して担当者からのコメントは得られていない。
新型コロナによって在宅勤務が定着している人も多いが、これまでオフィス勤務を中心としてきた企業では、企業規模の大小に関わらず、従業員をいつ、どのようにオフィス勤務に戻すのか、という問題に直面している。コロナ禍において、当初は一時的措置と考えられていた在宅勤務だが、米国のオフィスワーカーの間ではリモートワークがすでに新しい生活様式として定着しており、ビジネスリーダーたちはさまざまな見解を示している。
JPモルガン・チェース(J.P. MORGAN CHASE)のジェイミー・ダイモン(Jamie Dimon)会長兼最高経営責任者(CEO)は、最近公開された株主向けの年次書簡で「アメリカのビジネスにおけるリモートワークは今後も続くだろう」と予測しており、従業員の10%は在宅勤務を継続し、そのほかの従業員もリモートワークと出社を組み合わせた“ハイブリッド・ワーク”を行うとの見通しを立てている。一方で、リモートワークのマイナス要素として、従業員同士の交流が減ったことや、対面でのクリエイティビティーを発揮できない点を挙げた。
片やリード・ヘイスティングス(Reed Hastings)=ネットフリックス創業者兼共同CEOは、リモートワークに対して真っ向から否定的な見解を示している。20年9月の「ウォール・ストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)」のインタビューで従業員の在宅勤務について質問された際には「プラス要素は1つもない」とコメントし、社員がオフィス勤務に戻るタイミングについては「ワクチンが承認されてから12時間後」といったジョークも飛ばしたほどだ。
ヘイスティングス創業者兼共同CEOは、従業員の勤務スタイルをパンデミック以前の状態に戻したいと考えているが、実施するのはワクチンの承認から半年後になると述べている。ワクチンが初めてアメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration、FDA)に承認されたのが12月であったことから、オフィス出勤の再開にあたって当初の予定とはズレが生じたが、現在ネットフリックスではできるだけ多くの社員がワクチンを完全接種することを目指している。
オフィス勤務に戻す計画を進めているネットフリックスだが、在宅勤務の選択肢が残るかどうかは不明だ。ヘイスティングス創業者兼共同CEOは、「多くの企業において、週4日はオフィス勤務で、残りの1日は在宅でバーチャル的に仕事をする状態になって“しまう”だろう」と予測している。