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なぜ今、ウェブ媒体が雑誌を発行するのか?

 月間ユニークユーザー2000万人という巨大キュレーションメディア「メリー(MERY)」を運営するペロリが3月25日、初めての紙媒体「メリー」を、「ナイロンジャパン(NYLON JAPAN)」などで知られるカエルムと共同で創刊した。20代前半の女性がコアターゲットで、首都圏大都市を中心に全国書店で販売している。雑誌経験者のペロリの中村香織が編集長を務め、クリエイティブ・ディレクターに戸川貴詞カエルム社長が就く。役割分担としては、ペロリが大枠をディレクションし、カエルムが制作や流通を担当。共同で営業するというスタイルだ。5万部を発行したが、発売当日から話題を呼んでおり、8月には2号目を発行することも決定。コストも時間も労力もかかるが、なぜ今、雑誌を作ろうとしたのか?「メリー」の発起人でもある中川綾太郎ペロリ社長と戸川貴詞カエルム社長に話を聞いた。

WWDジャパン(以下、WWD):創刊の理由とは?

中川綾太郎ペロリ社長(以下、中川):「メリー」を地球にしみ込ませたい。そのためには紙媒体が必要だと感じた。これまでも「メリー」は、スマホにおける雑誌を読む体験を提供するサービスとして創刊した。また、創刊時から紙へのリスペクトもあった。ウェブにはウェブの良さがある。紙には保存性や写真にこだわれることなど、ウェブでは表現できない部分が多くある。また、雑誌として流通することで、「メリー」を知ってもらえるメリットもある。

WWD:改めて、ウェブの良さとは?

中川:いつでもすぐに見られるし、夜の10~12時というピークタイムに見た「明日カワイクなる方法」を翌日すぐに活用することができる。雑誌は月に1回、1~2カ月先までを見越した情報発信に限られるが、ウェブは発信するコンテンツの数も制限しなくていい。SNSなどで拡散されるなどの相乗効果を生む可能性もある。

WWD:なぜこのタイミングなのか?

中川:「メリー」はアプリ全盛期の2013年に、あえてウェブメディアとしてスタートした。アプリはそれ自体を知らないとダウンロードされない。まずはウェブメディアとして、記事ごとにでもユーザーにリーチできる環境を作りたかった。その後、ファンが増えるにしたがってアプリを開発してきた。今回はファンのために、ウェブ以外の他のシチュエーションでも「メリー」を見てもらえるように紙媒体を選んだ。ファンが付いてくれた今だからこそ、やりたかったことであり、やれることだと思う。

WWD:「メリー」は今年2月、外部サイトの閲覧が可能になる複数外部パートナーとの提携を発表したばかり。その中にはカエルムが運営する「ナイロン」もあったが、今回、提携先としてカエルムを選んだのはなぜ?

中川:制作、流通、営業まで一気通貫してやっていることと、ソーシャルメディアへの取り組みも先進的であること、なによりも戸川社長が直接コミットしてくれて、パートナーとして取り組みやすい座組みが見えたことが大きな要因だ。

WWD:長年、雑誌に携わってきた戸川社長だが、今回の取り組みを決めた理由は?

戸川貴詞カエルム社長(以下、戸川):今後は紙の時代にあったやり方として単体の媒体だけで新しい価値を提供し続けることは難しいと思っていた。「メリー」には新たなユーザー価値を作る可能性がある。ビジネス的な発展がなければ取り組む意味はないが、表面的な部分だけでなくどんどんトライアルできる面白さや手応えを感じた。

次ページ:他にはない「メリー」独自のコンテンツの作り方とは? ▶

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