香港発のオンラインメディア「ハイプビースト(HYPEBEAST)」の日本法人ハイプビースト ジャパン(HYPEBEAST JAPAN)は、女性向けメディア「ハイプベイ ジャパン(HYPEBAE JAPAN以下、ハイプベイ)」を2月に開設した。20~30代前半の女性をターゲットに、国内外のストリートファッションやアート、カルチャーのほか、ビューティの情報を、当面はインスタグラムのアカウントを通じて発信していく。同社はさらにオンラインストア「HBX ジャパン(HBX JAPAN)」とゴルフメディア「ハイプゴルフ ジャパン(HYPEGOLF JAPAN以下、ハイプゴルフ)」も立ち上げた。サイトの月間平均訪問者数は、2021年の時点で18年の立ち上げ時から2倍以上となる170万に成長。3月には本国のハイプビーストとエイベックス・エンタテインメントが戦略的パートナーシップを結ぶなど、事業拡大に向けた動きを急速に活発化させている。阿部勇紀「ハイプビースト ジャパン」編集長兼マネージングエディターに、新規事業に見出した勝機について聞いた。
新メディアで間口を広げ
ブランド力で収益を得る
——このタイミングで新メディア「ハイプベイ」や「ハイプゴルフ」を開設した理由は?
阿部勇紀「ハイプビースト ジャパン」編集長兼マネージングエディター(以下、阿部):ハイプビースト ジャパンが2019年に設立されたタイミングにすでに計画はあったが、人員の準備がようやく整った。これまでは女性向けの情報も「ハイプビースト ジャパン」のインスタグラムで投稿していたが、エンゲージメントがあまり高くなかった。であれば日本にZ世代の女性向けストリートファッションメディアが意外と少ないため、女性版の「ハイプベイ」として切り分けた方が独自のポジションが築けると考えた。「ハイプゴルフ」についても国内のゴルフ人口は約580万人と市場は大きいので、チャンスは十分ある。
——和島昭裕前社長が2020年末で退任したばかりだが、新メディア立ち上げで運営体制に変化は?
阿部:前社長が在籍時から進めていた計画なので、特に大きな変化はない。現在の社員は営業や経理などを含めて約15人で、編集部には雇用形態がさまざまな7人が在籍してニュースや企画などのコンテンツを制作している。「ハイプゴルフ ジャパン」は業務委託での運営となる。
——女性向けの「ハイプベイ」とはどういうメディア?
阿部:本国の「ハイプベイ」は5年前にすでに始動しており、「ハイプビースト」の女性版として、ストリートファッションとビューティを中心に、ライフスタイル、アート、エンターテイメント、デザインなどカルチャー全般を扱っている。日本版では本国同様ストリートファッションを軸に、より日本のシーンやコミュニティー、クリエイターにスポットを当てたメディアとして運営したい。日本版は現在インスタグラムの運営のみで本国との連携もほぼないが、近い将来サイトを開設し、日本のコンテンツを本国に提供できるぐらい充実させたい。
——“女性版”の情報を差別化する基準は?
阿部:ストリートファッションのカテゴリーでは「ハイプビースト」と記事が重複することもある。ただ、編集の切り口や書き方を変えている。例えば、「シュプリーム(SUPREME)」の新作発売の情報だったら、男性向けにはディテールやスペックを紹介し、女性には全体のムードを分かりやすく伝える見せ方を意識している。また「ハイプベイ」では動画を強化し、インフルエンサーを巻き込んでユーチューブやIGTVのコンテンツを多く制作していくつもりだ。
——女性読者の比率を上げたいということ?
阿部:そういうわけではない。今の日本版「ハイプビースト」の読者は男性7割、女性3割で、この比率はほぼ変わらないと考えている。
——収益はどのように得ている?
阿部:「ハイプビースト」「ハイプベイ」「ハイプゴルフ」のメディア事業での広告を柱とし、ほかにもプロダクションやクリエイティブ制作を行うエージェンシー事業“ハイプメイカー(HYPEMAKER)”も収益の中心だ。両事業の売り上げ比率はほぼ同じで、今後は後者がより伸びていくと考えている。広告案件で制作した商品をオンラインストア「HBX ジャパン」でグローバル市場に販売できるのも強みだ。メディアのブランド力を生かし、ビューティの分野にも広告の幅を広げていきたい。
——エイベックスとの提携が今後に及ぼす影響は?
阿部:現状でお話しできることが正直ほとんどなく、1、2年で何か大きなプロジェクトが動き出すということはないと思う。
——今後の施策や目標は?
阿部:新規事業を軌道に乗せて、本国のサイトがライバルになるぐらいの規模感を目指したい。ここ1年は海外から日本に渡航できない状況が続いているため、日本の情報に飢えている読者が世界中で増えている。日本を拠点にしたグローバルメディアとして、ローカルの情報を発信していくことに使命感がある。特にアートやゲーム、アニメなどの日本らしいカルチャーを、世界に向けてかっこよく紹介していきたい。「ハイプビースト」はいい意味で“広く浅く”のメディアだ。その軽やかさを武器に、これからも常にベストなタイミングで読者に情報を届けていきたい。