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NYのフラワーショップ4店が語るコロナ下での取り組み 「花は希望の象徴」

 コロナ禍に関連した休業要請や外出規制などの措置はあらゆる業種に影響を与えているが、企業イベントや結婚式などが中止または延期されている現在、そうした会場の飾り付けをするフラワーショップも苦難に直面している。一方、ロックダウンによって自宅にいる時間が長引くにつれ、花や植物など自然との触れ合いを渇望する人が増えており、観葉植物の売れ行きは好調だという。ファッションブランドとの取引も多いニューヨークのフラワーショップ4店の現状や今後の展望を、米「WWD」が聞いた。

 2002年に創業したルイス・ミラー・デザイン(LEWIS MILLER DESIGN)は、「シャネル(CHANEL)」「ブルガリ(BVLGARI)」「ティファニー(TIFFANY & CO)」など多くのラグジュアリーブランドに加えて、バーグドルフ・グッドマン(BERGDORF GOODMAN)などの老舗百貨店や美術館、ホテル、そしてアマゾン(AMAZON)やネットフリックス(NETFLIX)といった大企業とも取引のある人気のフラワーショップだ。

 同店のルイス・ミラー創業者は、「コロナ禍で自宅に居ざるを得ない中、人々は草花の美しさとそれがもたらす喜びをより有り難く思うようになった。以前よりも自然との触れ合いを求めるようになったし、花は季節や時の移ろいを示してくれる。咲いた花はいずれ枯れるが、室内にそうした目に見える“変化”があることで気分も変わる。花が持つ美はリアルでオーセンティック(本物)だからこそ癒やされるのだと思う」と語った。

 ニューヨーク州では20年3月中旬から断続的にロックダウンが実施されたため、企業のイベントやパーティー、結婚式などが次々と中止または延期された。これに伴い、ぎっしりと詰まっていた予定が瞬く間に白紙になっていったという。事業を継続するために政府による補助金を受けたものの、それだけでは費用をまかなえず、10人いた従業員は現在5人となっている。同氏は、「ショックでしばらく呆然としていたが、やがてこうしてはいられないと奮い立ち、“フラワー・フラッシュ・ボックス”を考案した」と話した。

 これはフラワーアレンジメントと、それを飾るシックな花器やキャンドルなどを同梱して送るサービスで、価格は250~525ドル(約2万7000〜5万6000円)。アメリカン・エキスプレス(AMERICAN EXPRESS)と提携し、同社のクレジットカードで支払うと金額の10%が医療施設に寄付されるキャンペーンが行われたボックスもあり、自宅用や贈答品として人気を博した。

 ルイス・ミラー・デザインは、「花を通じてニューヨークにポジティブな影響を与えたい」として、街角や公共のスペースに花を飾る“フラワー・フラッシュ”プロジェクトを16年から行っているが、コロナ禍でその重要性がさらに増したという。バス停や街灯、噴水などを色鮮やかな花で彩るこのプロジェクトは概ね好評を得ているが、時にはトラブルもある。医療従事者や入院患者を元気付けようと病院の前に作品を設置した際には、警備員にそれを移動させるよう言われたそうだ。しかしそこで諦めるのではなく、病院内で配布できるように作品を分解し、花を一輪挿しに小分けにして届けたら喜ばれたという。ほかにも、やはりアメリカン・エキスプレスと組んで行った“フラワー・フラッシュ”チャリティーでは、医療従事者向けの寄付としておよそ5万ドル(約540万円)を集めることに成功している。

 これらに加えて、同店ではオンラインでフラワーアレンジメント教室を開催したり、「ヴァン クリーフ&アーペル(VAN CLEEF & ARPELS)」やラグジュアリーECサイトを運営するモーダ・オペランディ(MODA OPERANDI​)と協業したりしているが、需要が本格的に回復するのは秋頃になると見込んでいるという。同氏は、「秋以降の結婚式やパーティー、企業イベントの問い合わせがすでにたくさん来ている。今後の展望は明るいと思うし、フル回転で頑張りたい」と述べた。

 単色でまとめたモダンなアレンジメントで知られ、30年以上の歴史を持つフラワーショップ、マイケル・ジョージ(MICHAEL GEORGE)は、配送エリアを拡大することでギフト需要を維持した。従来は店舗があるマンハッタン内としていたが、これをニューヨーク州ロングアイランドにある高級住宅地のハンプトンズやウェストチェスター郡、ブルックリンなどに広げた。これによって、例えばそうしたエリアで在宅勤務をしているエディターに、デザイナーが取材の礼状と共に花束を贈るといったニーズに応えられた。

 同店の創業者であるマイケル・ジョージ氏は14年1月に亡くなっているが、現在は妻のリサ・ジョージ(Lisa George)とビジネスパートナーが取り仕切っている。家族経営の小さな店として営業してきたことが幸いして、コロナ禍の中でも政府による事業支援は受けずに済んだという。同氏は、「20年は誰もが人生を見つめ直し、優先すべきものは何かを考えたと思う。そのためか、母の日の注文数はいつもより多かった。愛情や気持ちを伝えたいと思う人が増えたのだろう。その一方で、社会の先行きが不透明なことから値段を気にする顧客が増加した。最近は結婚式やイベント用の注文も増えてきたが、やはり費用について慎重になっていると感じる」と話した。

 コロナ禍以前、同店ではファッション・ウイークになるとさまざまなブランドや業界関係者から大量の注文を受けていた。デザイナーのマイケル・コース(Michael Kors)は、コレクションに参加するために海外から来るエディターらに贈る豪華なフラワーアレンジメントを多数注文していたという。そうした大口の取引はまだ戻っていないが、現在でも一部の顧客が450~600ドル(約4万8000〜6万4000円)と比較的高価なギフト用の花を購入してくれるので店が維持できていると同氏は説明した。

結婚式は予算そのままで「少人数でも豪華に」

 1997年に創業したフルリサ(FLEURISA)は、主に企業イベントや結婚式、富裕層の自宅などに飾るフラワーアレンジメントを手掛けている。2017年にピエール・ベルジェ=イヴ・サンローラン財団(THE FONDATION PIERRE BERGE-YVES SAINT LAURENT)がモロッコ・マラケシュにオープンしたイヴ・サンローラン美術館にも、同店によるアレンジメントが飾られたという。

 店舗を持たないため、オーナーのイザベル・ボスケ・モラ(Isabelle Bosquet-Morra)は20年7月にマンハッタンを離れ、ニューヨーク州の北部に引っ越した。同氏は、「みんなパーティーがしたくてうずうずしていると思うので、今後また需要が回復したら都心に戻ろうと考えている。花は気分を明るくしてくれるし、贈られるととても嬉しい気持ちになるものだ。インスタグラム(Instagram)を見れば分かるように、花は写真を撮るのも楽しい」と話した。

 コロナ以前とは異なることの一つに、感染予防策の徹底が挙げられる。花を飾る場所を実際に目にすることなくアレンジメントを作らなくてはならないケースが増えた。最近の注文では、顧客の邸宅にあるインテリアや食器類が分かる写真を何枚か送ってもらい、それを元に制作。完成したアレンジメントはマンションのドアマンに渡すという契約だったため、顧客とは一度も対面しなかったという。

 26年前にマリリン・ウェイガ(Marilyn Waga)が創業し、現在は娘のメレディス・ウェイガ・ペレズ(Meredith Waga Perez)と共同で運営されているベルフルール(BELLE FLEUR)は、法人顧客の60〜70%がファッションおよびビューティ企業のため、コロナ禍でイベントやコレクションの中止が相次いだ20年3月半ば以降からは注文が激減。14人いた従業員を6人にまで減らさざるを得なくなった。

 しかし6月頃になると、ファッションブランドが取引先に贈るフラワーアレンジメントの注文や、企業のチーム作りやコミュニケーションを目的としたオンラインでのフラワーワークショップの依頼が舞い込むようになった。メレディスは、「知り合いや自分を元気付けたいなどの理由で花を注文する個人客も多く、花束の需要は安定している。当店をサポートするために花を買ってくれる長年の得意客もいるので、事業を維持することができた」と話した。

 また、最近は延期されていた結婚式の需要も戻りつつある。21年秋以降の挙式予定で、招待客の人数は当初より少なくても、予算はそのままで豪華に行いたいというケースが多いという。

 同氏は、「花は希望の象徴であり、花を贈るのは相手とつながりたいという気持ちの表れだ。フワラーアレンジメントをデザインする際には、贈り主であるブランドのイメージだけでなく、彼らが伝えようとしているメッセージがうまく伝わるように気を配っている。現在は対面で会いにくいので、誰もが新たなコミュニケーション方法を模索しているが、花は気持ちを伝えるのにとても適していると思う」と語った。

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