「フリークス ストア(FREAK'S STORE)」の創業者であるデイトナ・インターナショナルの鹿島研社長が4月30日付けで退任する。株式の過半数を投資会社のユニゾン・キャピタルに売却し、5月1日から新体制を敷く。デイトナの2021年2月期は売上高が226億円と、コロナ禍においても前年売り上げをキープした。今期は売上高250億円以上を見込むが、それを大きく上回る勢いで絶好調だ。59歳という年齢は一線を退くにはまだ早い。電撃退任の鹿島社長が胸中を語った。(この記事はWWDジャパン2021年4月26日&5月3日号からの抜粋です)
WWDJAPAN(以下、WWD):コロナ禍でも業績は好調だ。なぜこのタイミングで第一線から退くのか?
鹿島研デイトナ・インターナショナル社長(以下、鹿島):もともと後継者にどこかのタイミングでバトンを渡したいという思いがあった。この3〜4年はどういう方法で次に渡すかを考え、若いスタッフにも「僕の命は無限ではない。一期一会のこの瞬間の会話から僕がつかんできた何かを感じて、糧にしてほしい」と伝えてきた。今は自分が楽しいし、ラクだ。業績もいいから特に指示を出すこともないし、みんなが創業者である僕を慕ってくれている。でもこの甘さに漬ってトップで居続けることは、イノベーションの妨げになる。だから僕が抜けることで、次の若い芽に吹き出してほしいという期待に賭けた。
WWD:デイトナがデイトナであってほしいから、判断したと。
鹿島:そうだ。もう一つは今年の誕生日で還暦を迎えるが、赤いベストを着させられるのも違和感があるし、常に赤い火をハートに灯しておきたい。創業のきっかけとなったアメリカで感じた“豊かさ”を世の中に伝えたいという思いは今も変わらなく、それを新しい形でチャレンジする。世界を旅したり、好きな趣味にさらに没頭したりすることで生まれてくる新しい価値観やネットワークを次の自分の人生で見出したい。退任後はまず、タイミングを見計らってアメリカからカナダ、アラスカを抜けて、ペルー、アフリカ、ヨーロッパ、ユーラシア大陸を自分で運転して旅するつもりだ。それにはやっぱり体力や気力が必要。
WWD:ワクワクを提供するために自身は一歩引き、かつ自分がさらにワクワクするものを探しにいく。
鹿島:3年前にペルーに出張した。非常にいいペルーニットが安価で手に入るが、現地の生産環境に不備がないかを確かめるのが目的だった。インディオの文化を引き継ぐ放牧民の衣装や生き方を見ることができた一方、標高4000メートルの寒い中、重ね着をしながら裸足でニットを編む姿を見た。現地の人に「大量にニットを買わせていただくから、この売り上げの一部を何か子供たちに役立てられないだろうか」と問うと、「われわれは充実して生きている。あなたたちにそんなことを言われる筋合いはない」と言われた。それを聞いてまだまだ自分の価値観で物事を見ていることに気付き、もっといろいろな世界を肌で感じてみたいと思った。
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