ファッション

アルベール・エルバスを哀悼する業界人の声 ラルフ・ローレンやアルマーニも

 4月24日、デザイナーのアルベール・エルバス(Alber Elbaz)氏が死去した。59歳だった。同氏のベンチャー事業、AZファクトリー(AZ FACTORY)のパートナーであるコンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT以下、リシュモン)によれば、死因は新型コロナウイルスによるものだという。

 エルバス氏はモロッコ生まれのイスラエル育ち。1980年代半ばにニューヨークに移住し、ブライダル会社を経て、ジェフリー・ビーン(GEOFFREY BEENE)に入社。シニアアシスタントとして7年間勤務した。96年に「ギ ラロッシュ(GUY LAROCHE)」に入り、その才能が注目を集め、イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)の後継者として「リヴ・ゴーシュ(RIVE GAUCHE)」を引き継いだ。2001年から「ランバン(LANVIN)」のアーティスティック・ディレクターを14年間務め、復活に導いたことで知られる同氏は、新ブランド「AZファクトリー」のデビューコレクションを21年1月に発表したばかりだった。

 明るくユーモアのある人柄だったエルバス氏は友人も多く、その突然の死にファッション業界は悲しみに包まれている。同氏を悼む企業トップやデザイナーらの声を紹介する。

ヨハン・ルパート(Johann Rupert)=リシュモン会長
「アルベールの突然の死に、大きな衝撃と悲しみを感じている。その知性、繊細さ、温かく寛容な心、美的感覚、そして尽きることのないクリエイティビティーに常に感銘を受け、圧倒されていた。彼が夢を実現するべく取り組んだ最後のブランドで協業できたことを心から光栄に思う。当社とAZファクトリーを代表し、アルベールのご家族やご友人の皆様にお悔やみを申し上げる。私個人としても、同僚であり最愛の友人を失ってしまった」

ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)会長兼最高経営責任者(CEO)
「エルバス氏の突然の死によって、ファッション業界は輝かしく感性豊かなデザイナーを失ってしまった。その新鮮かつエレガントなクリエイティビティーは、ファッションの世界に永続的な影響を与えた。彼はフランスの最も古くてアイコニックなブランドの一つ(である『ランバン』)に、新たな息吹をもたらしてよみがえらせた」

フランソワ・アンリ・ピノー(Francois Henri Pinault)=ケリング(KERING)会長兼CEO
「親愛なる友人、アルベールの訃報に際し、深い悲しみを覚えている。人間味豊かでユーモアに満ちていた彼は、誰からも愛されていた。クリエイティビティーの面においても、フェミニンかつモダンなスタイルは天才的だと多くの人々から敬愛されていた」

ジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)
「エルバス氏が亡くなったと聞き、大きな悲しみを覚えている。彼はファッション業界に残る、数少ないプロフェッショナルの一人だった。クリエイティビティーにあふれ、女性を美しく見せる優れた腕を持っていた。以前どこかの空港で偶然会った際には足を止めて私の作品を褒めてくれたが、それが本心からの言葉だと伝わってきた」

マリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)「ディオール(DIOR)」アーティスティック・ディレクター
「アルベールのファッションへの大きな功績の一つとして、グラマラスさを文化的かつフェミニンで、楽しく人間味のあるものとして再解釈したことが挙げられる。彼は、常にそれを着る人を念頭にデザインをした。また彼が『ランバン』を現代的によみがえらせたことは、私を含め、伝統あるメゾンでクリエティブ・ディレクターを務める全てのデザイナーの素晴らしい手本となっている。以前アルベールと食事をした時のことだが、彼は同席した私の母と意気投合し、3人で楽しいひとときを過ごした。翌日、アルベールから母に美しい花束が届き、母はそのお礼に手作りのジャムを贈った。私はアルベールのことを、そうした親しい友人、家族の一員として覚えておきたい」

ラルフ・ローレン(Ralph Lauren)
「アルベールはとても優しく、寛容で謙虚な人だった。イベントや街で会うと、いつもそれは温かな挨拶をしてくれて、古い友人同士のように楽しく談笑した。彼はデザイナーとしても素晴らしく、女性が自分を美しいと感じられる、着心地のいい服をデザインした。近年、アルベールはファッションが大げさでうるさいものになってしまったのではと懸念し、“囁き”のようなデザインを好むと言っていた。彼の美しい“囁き”は、今後も長く愛されることだろう」

ピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)「ヴァレンティノ(VALENTINO)」クリエイティブ・ディレクター
「ファッション界は最も大きな宝の一つを失い、私は誠実で特別な真の友人を失った。私がクリエィティブ・ディレクターとして歩み始めた頃、彼は誰よりも私を歓迎してくれた。彼の手による美しいデザインは、その活発で個性的な、生きる喜びに満ちた魂が込められている。アルベールがいなくなってとても寂しいが、その比類のない美しさを持つ作品を観賞することで、少しは慰められると思う。彼のビジョンや作品は、これからも私たちをインスパイアしてくれるだろう」

ステラ・マッカートニー(Stella McCartney)
「アルベールの突然の訃報がとても悲しく、大きなショックを受けている。彼は天才的で、あらゆる意味で優れたクリエイターだったが、誰よりも優しくて、寛容で、遊び心に満ちた人だった。ファッション界で最も素晴らしい才能を持つデザイナーの一人だった彼の作品は永遠に残り続けるし、彼自身も人々の心の中で永遠に生き続けるだろう。本当に寂しいし、とてつもなく悲しいニュース」

リック・オウエンス(Rick Owens)
「本当に悲しい。アルベールの温かな人柄や比類のない才能が失われたことは、ファッション界に大きな穴を残すだろう。彼は近所に住んでいたので、我が家のテラスで私の母の手作りクッキーを食べながらよく談笑したものだ。彼と母が会う機会がなかったことが残念だ」

トミー・ヒルフィガー(Tommy Hilfiger)
「アルベールとは1990年代からいい友人で、彼のユーモアに満ちた人柄と地に足のついた態度が大好きだった。『ランバン』をよみがえらせた手腕が素晴らしいことは言うまでもないが、その際に消費者の声に耳を傾け、いかに実現していったのかを説明する様子に感銘を受けた。彼がトレードマークの蝶ネクタイ姿で、それは熱心に語っていたことを鮮やかに覚えている。彼がいなくなってしまい、多くの友人やファンたちが寂しく思うことだろう。今日は本当に悲しい日だ」

ジャンポール・ゴルチエ(Jean Paul Gaultier)
「アルベールは才能にあふれていて、女性を美しく見せるにはどうすればいいのかを深く理解していた。いなくなる前に、彼は新たな世界に適合した夢のようなコレクションを見せてくれた。ありがとう、アルベール!」

クリスチャン・ルブタン(Christian Louboutin)
「アルベールは、自由で美しい魂の持ち主だった。既存の枠にとらわれない発想や行動をするだけでなく、全力で仕事に取り組んでいた。彼は卓越したクリエイティビティーとリアルな視点のあるファッションを敬愛していた。そうした意味で、彼は私やさまざまなデザイナーの手本であり続ける。アルベール、君は唯一無二の素晴らしいクチュリエとして、そして本当にいい人として、みんなの記憶に残るだろう」

ドリス・ヴァン・ノッテン(Dries Van Noten)
「アルベールは輝ける光のような存在で、素晴らしい仲間であり、あふれんばかりの才能の持ち主だった。そのレガシーはファッションの歴史に刻まれるだろう。ご家族、ご友人の皆様に心からのお悔やみを申し上げる」

トム・フォード(Tom Ford)
「アルベールの訃報に、大きなショックと深い悲しみを覚えている。彼は人間的に素晴らしい人だった上に、才能あふれる偉大なデザイナーだった。本物の紳士だった。優しくて、面白くて、知的で、偽りのない温かさがある彼と会うのはいつでも嬉しい出来事だったし、誰もがそう感じていたと思う。彼がいなくなってしまい、本当に寂しい」

ダイアン・フォン・ファステンバーグ(Diane von Furstenberg)
「アルベールとは、彼がジェフリー・ビーンのアシスタントをしている頃に出会った。当時、私が結婚式に出席するためにロンドンに行く際、ペールグリーン色でギンガム柄のシルクのコートと、ホルタードレスを作ってくれた。それは予想外の組み合わせでいて、とても美しかった。その後、もっと親しくなってから、実は私のところに仕事の面接を受けに来たことがあると教えてくれたが、私はそのことを覚えていなかった。損をしたのは私のほうね。彼は才能のあるデザイナーで、ディテールにこだわりがあり、とても美しい服を作った。いなくなって、本当に寂しく思う」

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