ビジネス

アパレルは「生活必需品」ではないの? エディターズレター(2021年4月28日配信分)

※この記事は2021年04月28日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

アパレルは「生活必需品」ではないの?

 休業要請で休業する店、しない店に釈然としないものを感じます。

 東京都の休業要請の対象は「1000平方メートル以上の商業施設」で、ただし「生活必需品は除外」。後者の「生活必需品」というあいまいな基準を押し付けられた百貨店は線引きに悩みながらも、大半の店は食品と化粧品売り場のみ営業することで落ち着きました。化粧品は消耗品でもあるため、昨年春の休業時も再開を望む声が多かったと言います。たいていの百貨店は地下1階が食品、1階が化粧品のフロア構成なので、施設運営上、管理しやすい事情もあったのでしょう。

 残念ながらアパレルなどのファッション分野は「生活必需品」に入れてもらえませんでした。ファッション業界で働く人たちは昨年、「不要不急」という言葉にもやもやを感じたはずです。おしゃれを提案する自分たちの仕事は不要不急なのか、と。今回もまた「生活必需品」という言葉に向き合わざるを得なくなっています。

 ショッピングセンター(SC)でも「生活必需品」を巡って対応が分かれました。マロニエゲート銀座2に入る「ユニクロトーキョー」は4950平方メートルの巨大店舗であるにもかからず営業中。一方でマロニエゲート銀座1に出店する「ユナイテッドアローズ」「ジャーナルスタンダード」「ローズバッド」といったセレクトショップは全て休業していました。「ユニクロ」は「生活必需品」だけれども、セレクトショップはそうではない区分なのでしょうか。

 1年以上続くコロナ禍で、アパレル小売業で格差が広がっています。ユニクロ、しまむら、西松屋チェーン、ワークマンといった郊外にたくさんの店舗を構えて、普段着を低価格で売る企業は好業績で推移しています。一方で、百貨店および百貨店で販売するアパレル企業、セレクトショップといった都心で通勤着や外出着を中価格・高価格で売る企業は大幅な減収に苦しんでいます。

 コロナ前からそういった傾向はあったし、コロナによって消費者の働き方や生活スタイルが変化しているので仕方のない面もあるでしょう。ただ、今回は行政の休業要請によっていわば人為的に格差が一層広がることになります。企業や働く人にとっては死活問題なのに、日額の協力金は百貨店やSCに20万円、テナントに2万円のみ。その命運を分ける「生活必需品」という基準は、雑なだけでなく、暴力的ですらあると思います。

MARKET VIEW:ファッション市場で日々発信されるホットなニュースを、「WWDJAPAN」のビジネス担当記者がコンパクトに解説。ニュースを読み解くヒントを提供します。

エディターズレターとは?
「WWDJAPAN」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在8種類のテーマをお選びいただけます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

2025年春夏ウィメンズリアルトレンド特集 もっと軽やかに、華やかに【WWDJAPAN BEAUTY付録:2024年下半期ベストコスメ発表】

百貨店、ファッションビルブランド、セレクトショップの2025年春夏の打ち出しが出そろった。ここ数年はベーシック回帰の流れが強かった国内リアルクローズ市場は、海外ランウエイを席巻した「ボーホー×ロマンチック」なムードに呼応し、今季は一気に華やかさを取り戻しそうな気配です。ただ、例年ますます厳しさを増す夏の暑さの中で、商品企画やMDの見直しも急務となっています。

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。