ファッション
連載 本明秀文のノットスニーカーライフ

アトモス社長・本明秀文のスニーカーライフ「飽きとの戦い」

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 スニーカーにまつわる噂話のあれやこれやを本明社長に聞く連載。2018年以降のスニーカーバブルは大衆を巻き込み、かつてないほどに盛り上がっている。「ナイキ(NIKE)」を筆頭に、毎日のように新作が発売され、SNSでは「買えた」「買えなかった」の応酬。そんな状態に警笛を鳴らす。(この記事はWWDジャパン2021年4月26日・5月3日合併号からの抜粋です)

本明秀文社長(以下、本明):「ナイキ」の人気が落ちてきた。頼みの綱だった“ダンク”ですら、ローカットはともかくハイカットの売れ行きが鈍ってきている。“エア ジョーダン(AIR JORDAN)”も“ジョーダン1”のハイカットは人気があるけど、ミッドカットは余っているし、売れるモデルと売れないモデルの差が以前にも増して開いてきている。

WWD:“ダンク”のハイカットはこの頃、二次流通でもほとんど値段が上がっていないですね。

本明:そう。利益が出ないと分かれば転売ヤーが返品するから、その分リストック(再販売)も増えてくる。

WWD:そうですね。僕は有料のアラートサービスに登録しているので、ECのリストック情報を受け取っているのですが、最近は特に増えています。

本明:そうなると、メーカーは売れるモデルの生産数を無理やり増やさなければならなくなる。スニーカーのユーザー層をピラミッド型の図表にした場合、アトモス(ATMOS)や「ナイキ」の「スニーカーズ(SNKRS)」は、上位15%のユーザーを狙っている。この15%のユーザーが、ハイプスニーカー(レアスニーカーのこと)の好きないわゆる“スニーカーヘッズ”と呼ばれる人たち。だからハイプスニーカーも本来はこの15%のヘッズたちに対して、少し多いぐらいの生産数が望ましい。ハイプなものを見せながらブランディングして、本来、売り上げを取るのはボトムの部分のはずだった。だけど今はハイプスニーカーしか売れないから、ハイプスニーカーを大量に生産して全体の売り上げをキープするしかない。「ナイキ」の場合はこの動きがスニーカーバブルになった2018年を区切りに顕著に現れている。僕の肌感だと、17年以前は1型1万〜2万足だったはず。だけどそれ以降どんどん増え続けて、今では1型10万足ぐらい生産していると思う。あまりにも多い。

WWD:街中でも同じモデルを履いている人をよく見かけるようになりました。

本明:そうだね。ただし、インバウンドがいれば、その10万足のうちの何割かを買って、自国に持って帰ってくれていたかもしれない。でもコロナでそれも厳しくなった。この多さだと、さすがの「ナイキ」でも飽きられてしまう。ただ、スニーカーブームが終わったわけではなくて、最近は他メーカーの人気がジワジワと出始めている。「プーマ(PUMA)」の“スウェード(SUEDE)”をアトモスで別注したんだけど、刺しゅうを施して2万2000円もするのに2時間で500人から抽選応募があったし、「アディダス(ADIDAS)」の「サウスパーク(SOUTH PARK)」コラボも人気がある。ユーザーの目が肥えた今が、スニーカー業界にとっての過渡期かも知れない。

WWD:コロナで店舗営業自体が厳しい状況だと思いますが、店舗とECだと販管費はどちらがかかるんですか?

本明:実はECの方がかかる。その原因が返品率の高さだね。店舗で売ったモノの返品はほとんどないけど、ECだと返品率が異常に上がる。それにクレジットカードの不正利用もあるから対策に3Dセキュアを導入しなければいけない。やっぱりお客さまの顔が見えないのはよくないよね。

WWD:なるほど。ところで、GWを前に3度目の緊急事態宣言が発令されそうですね。

本明:もうワクチンを打つしか解決方法はないから、僕たちも立ち止まっていられない。いろいろと準備を進めていて、7月末にはジョーダン専門店の「トーキョー23(TOKYO 23)」を拡張移転オープンする。場所は原宿の「シュプリーム(SUPREME)」向かいにあった「鳥良商店」の跡。これまでは60㎡しかなかったけど、次は200㎡あるからイベントもできる。ガンガン攻めていかないとね。

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