「安直な提灯記事」ってなんだろう?
「アルーア」の試みは、同業ながら「さすが!」です。
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先日、私と4人の副編集長、そして2人のアドバイザーでワークショップを開き、私はそこからWWDJAPANというメディアのアイデンティティーや、それに基づく編集方針を策定。編集部員と共有し、新体制を本格スタートさせました。編集方針については「DO(私たちがやるべきこと、積極的に挑戦すべきこと)」と「DON’T(WWDJAPANらしくないこと、私たちは挑戦しなくて良いこと)」を列挙しています。基本的には、「みんな自由にやれば良い」と思っています(笑)。だから編集方針は「DO」ばっかりで、「DON’T」は3つしかありません。その1つは「安直な提灯記事を書かないこと」(残り2つは、どこかで、またお話ししますw)。ワークショップでそう記したのは、1人の副編集長でした。こう記すということは、「これまでのWWDJAPANには、そんな記事があったのではないか?」「全てのコンテンツに、熱量がこもっていたか?」と思う機会があったことの裏返しです。さらには以前、このお手紙でもお話しした記憶がありますが、多様性に関するプロジェクトを立ち上げ記念Tシャツを発売したブランドに関するリリースの記事化をお願いした若手に、「中国で作ったペラペラのTシャツについて、記事にするのはなぜですか?」と尋ねられ、「鋭いな……」と思った記憶も蘇りました。本当に実践している場合のみ、自信を持ってそう発信できる場合のみ、「リサイクル可能な」や「エコフレンドリー」「環境に優しい」なんて言葉は使うべきですよね?「アルーア」の記事を読んで、改めて「慎重にならなくちゃ」と気を引き締めたのと同時に、「でも自信があるなら、臆せず発して良いよね?」とも思いました。
「アルーア」の記事は後半、「アンチエイジング」という言葉について語っています。記事内にある「(この言葉は)加齢はいたって自然なことにも関わらず、良くない・抗うべきものだとする考えを助長している」という考え方は、広く認識される考え方になったと思います。私も、基本的にはそう思っています。
そこで昨年、クレンジングバームなどが大ヒットしている「デュオ」などを手掛けるプレミアアンチエイジングの松浦清社長に直撃、「社名の一部であるアンチエイジングという言葉に対するネガティブイメージは、正直怖くないですか?」と尋ねたことがあります。すると松浦社長は、アンチエイジングという言葉をネガティブに捉える人の存在も尊重しながら、「僕らは、『健康寿命を延ばす』という想いで捉え、事業に取り組んでいます」と答えてくれました。「自信があるなら臆せず発信」の一例なのかな?と思います。
ソーシャル・イシューに関する話題には絶対的な正解なんて存在せず、それぞれが、それぞれの立場と想いで考え、時にはスタンスを変えながら向き合い続ける必要があります。発信・発言が苦手だったり、絶対に間違っていない正解にたどり着きたいと願う真面目気質な私たちにとって、悩ましい存在かもしれません。でも、絶対的な正解がないというのは、絶対的な不正解もないということ。それぞれが、違っていて良いということ。そう捉えられると、受発信の方法も変わるのではないでしょうか?少なくとも私にとって「安直な提灯記事」の定義は、「言われたままに書くこと」のみならず、「納得していないことを、その気持ちを置き去りにして発信すること」に変わった気がするのです。
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