今や日本の女性の過半数が50代以上となり、若年向けの提案に偏りがちと言われてきたファッションやビューティの世界でも、50〜60代といった市場に注目が集まるようになってきた。ファッションでは、ヤング市場に強かったアダストリアなどの大手メーカーが50〜60代向け市場に参入。ビューティ分野では“グレイヘア”を生かす大人女性向けのサービスが広がっている。消費の担い手として存在感を増す新50〜60代の心をつかむには何が必要か。世代別消費分析のプロである、伊藤忠ファッションシステムの小原直花ナレッジ開発室室長に聞いた。
WWD:従来はヤング主力だったアパレルメーカーなどが、50〜60代女性に向けたブランドを開発するようになっている。その背景は。
小原直花 伊藤忠ファッションシステム ナレッジ開発室室長(以下、小原): “団塊世代”(現69〜74歳)が50〜60代だったころから、50〜60代向けの服は落ち着いたデザインしかないといったことは言われていた。ただし、若いころにアイビーを経験した“団塊世代”は、基本となるファッションテイストがアメカジやトラッド。そうなると(ベーシックを強みとする)「ユニクロ(UNIQLO)」など既存のブランドでカバーできる部分も大きい。一方で、団塊の一つ下の世代である“DC洗礼世代”(現62〜68歳)は、20歳前後に「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」といった“カラス族”を経験した人たち。大きな分類では“DC洗礼世代”以降から、ファッションで個性を表現するという意識が広がったと考えている。
“団塊世代”、“DC洗礼世代”、その下の“ハナコ世代”(現56〜61歳)の女性は、結婚後一旦専業主婦になる率が高かった。しかし、“ばなな世代”(現51〜55歳)以降はDINKs(共働きの子なし夫婦)やシングルの比率も上がり、働き続けている女性も少なくない。そのように女性のライフスタイルは徐々に変化してきているのに、なぜか日本のファッション業界はずっと若い世代への提案にフォーカスしてきた。(50代以上向けのブランド開発がここにきて目立っているのは)そうした業界のあり方に物足りなさを感じている人が出てきたということだろう。ファッションで個性を表現してきたデザイナーやスタイリスト、モデルなどが50〜60代を迎え、自らが着たいものをデザインしたり、ディレクションしたりするようになっている。
WWD:日本の人口のパイとして最大の“団塊ジュニア世代”(現45〜50歳)も、50代の入り口を迎えている。
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