2021年3月期に過去最大となる171億円の最終損失を計上したワールドは今期(22年3月期)、屋台骨のブランド事業の立て直しで黒字化を目指す。24年3月期までの中期的な展望としては、デジタル事業、プラットフォーム事業における非アパレル分野への拡大に注力。アパレルに偏重した収益構造の抜本的な改革を急ぐ。
今期は本業のもうけを示すコア営業利益を80億円と予想する。前期に250億円の営業赤字を計上したブランド事業の黒字転換(営業利益51億円の計画)が前提となる。「黒字化はなんとしてでも果たす」(鈴木信輝社長)。不振の百貨店・SCブランドは粗利益のコントロールや販売員のデジタル活用などを進めるとともに、商品企画を抜本的に見直す。「マーケットをきちんと見て商品企画をするという、ブランドらしさをつくる当たり前の部分に目を向ける。独自の素材開発や新しい感度を持った人材の投入も必要になる」。
コロナ禍でも堅調なブランドへの投資シフトも進める。比較的値ごろなSC業態「デッサン(DESSIN)」「シューラルー(SHOO・LA・RUE)」の出店を加速し、ライフスタイルブランドの「ワンズテラス(ONE’STERRACE)」「212 キッチン ストア(212 KITCHEN STORE)」は店舗の大型化を進める。前期に2度にわたって実施した構造改革(計12ブランドの撤退、期末店舗数309の純減、希望退職者募集による434人の退職)により、69億円の利益の押し上げ効果を見込む。
中期戦略においては、デジタルとプラットフォームの事業領域を非アパレル分野にも拡大し、持続的な成長が可能な体質を作る。「これまでアパレルに頼ってきた事業構造から脱却し、新しいワールドグループを目指す」。
デジタル事業では今期、自社の生産・物流・店舗運営などのノウハウをBtoB外販するソリューションビジネスにおいて、在庫コントロールや基幹システムのサポートメニューを追加するなど、顧客の裾野を広げる。オフプライス業態の「アンドブリッジ(&BRIDGE)」の出店や古着チェーンの「ラグタグ(RAGTAG)」のEC強化にも力を入れる。テクノロジーを活用した原料ロスが出ない生産モデルの開発や、個人デザイナーに生産基盤を提供し、消費者をつなぐプラットフォーム「ワールド ファッション クラウド」(仮称)のテスト運用も開始する。事業全体の営業赤字幅を10億円に縮小(前期は20億円の赤字)し、23年3月期での黒字転換を目指す。
プラットフォーム事業では、子会社アスプルンドを中心に、アパレルの店舗内装のノウハウを生かした空間設計などをカフェやホテルなどへも外販。事業全体では医療用ガウン特需の反動で減益となるものの、外部収益を前期比81%増の230億円まで拡げる。