ファッション

「ヴァンズ」の共同創業者ポール・ヴァン・ドーレンが死去 スケートカルチャーの必須ブランド

 「ヴァンズ(VANS)」は5月8日、ポール・ヴァン・ドーレン(Paul Van Doren)共同創業者が死去したことを明らかにした。90歳だった。死因は公表されていない。

 同社は、「ポールは単なる起業家ではなく、イノベーターだった。製品のデザイン、流通、マーケティングにおいて大胆な実験を行うと共に、その数字や効率性に対する才能によって家業の靴屋を世界的なブランドに育て上げた。ご家族の皆様と、数え切れないほどのヴァンズファミリーに愛と力をお送りする」とコメントを発表した。同氏は4月27日に、自伝「オーセンティック:ア・メモワール・バイ・ザ・ファウンダー・オブ・ヴァンズ(Authentic: A Memoir by the Founder of Vans)」を上梓したばかりだった。

 1930年にマサチューセッツ州ボストンで生まれた同氏は、14歳で学校を中退し、シューズメーカーのランディーズ・ラバー・カンパニー(RANDY'S RUBBER COMPANY)に就職。スニーカーの組立ラインの最適化を行った功績を認められ、カリフォルニア州の生産拠点に栄転した。64年には、ブランドの認知度を上げるためにサーフィンの世界的なイベントである全米オープン・オブ・サーフィン(The U.S. Open of Surfing)に出店した。その際、ハワイの伝説的なサーファー、デューク・カハナモク(Duke Kahanamoku)にカスタムメイドのスニーカーを提供したことから、同社はサーフィン・コミュニティーから注目されることとなった。その後、経営陣との意見の相違から同社を退職。66年に「ヴァンズ」の前身となる靴店、ヴァン・ドーレン・ラバー・カンパニー(VAN DOREN RUBBER COMPANY)を家族と共に創業した。

 グリップ力の強い“ワッフルソール”を特徴とする「ヴァンズ」のスニーカーは、まず西海岸のスケーターからの支持を得た。スケートボードでは利き足の靴底が早くすり減ってしまうと聞き、片方の靴のみでも購入できるようにするなど、顧客のニーズに応えることで人気を拡大していった。

 その後、「ヴァンズ」は伝説的なスケートボードチーム、ズィーボーイズ(Z-BOYZ)のメンバーであり、プロスケーターおよびサーファーであるステイシー・ペラルタ(Stacy Peralta)やトニー・アルバ(Tony Alva)を招き、デザインなどについて意見交換を行っている。こうしたつながりから後にスケートチームやサーフチームを保有することとなり、スケートやサーフィンなどのユースカルチャーに不可欠のブランドとなった。同社は現在、全米オープン・オブ・サーフィンのタイトルスポンサーでもある。

 82年に公開された映画「初体験/リッジモント・ハイ(原題:Fast Times at Ridgemont High)」ではショーン・ペン(Sean Penn)が演じたキャラクターが「ヴァンズ」のスニーカーを履いていたことからさらに人気が高まり、世界的なブランドとなった。

 ヴァン・ドーレン氏は80年に一度「ヴァンズ」を離れて引退しているが、同社はその4年後に1200万ドル(約12億円)の負債を抱えて経営難に陥り、日本の民事再生法に相当する米国連邦破産法第11章を申請。同氏は再建策の一環として社長職に復帰した。

 90年代にはディズニー(DISNEY)社やストリートブランドとして人気となりつつあった「シュプリーム(SUPREME)」などと、2000年代以降は「カール・ラガーフェルド(KARL LAGERFELD)」「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」「フィアー オブ ゴッド(FEAR OF GOD)」「オープニングセレモニー(OPENING CEREMONY)」「ケンゾー(KENZO)」など多数のブランドと協業している。

 2004年、「ヴァンズ」は「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」や「ティンバーランド(TIMBERLAND)」などを擁するVFコーポレーション(VF CORPORATION以下、VFC)に3億9600万ドル(約427億円)で買収され、売上高20億ドル(約2160億円)以上のブランドに成長した。なお、VFCは20年11月に「シュプリーム」を21億ドル(約2268億円)で買収する契約を締結している。

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