「ゾゾタウン」を運営するZOZOが好調だ。2021年3月期は商品取扱高が前期比21.5%増の4194億円、営業利益が同58.3%増の441億円と、ともに過去最高を更新した。3月にはサイトの基盤であるUI/UXの大幅リニューアルを実施するとともに、強力な新カテゴリーとしてコスメもスタートした。創業者でありカリスマであった前澤友作氏の突然の退任からちょうど20カ月が経過した。澤田宏太郎社長兼CEOは就任直後から「more fashion」「fashion tech」を打ち出し、前澤氏の施策で失いつつあったテナントの大手アパレル企業からの信頼を取り戻すとともに、コロナ禍に伴うECシフトという追い風も受けて、順風満帆とも言える航海を続けている。その上で、澤田社長が新たに打ち出したのが、「パーソナライズ」「メディア化=買う以外のトラフィック強化」「生産支援」の3つだ。ZOZOはどこへ向かうのか。新たな針路を聞いた。
WWDJAPAN(以下、WWD):一週間前に突然の指名で19年9月に社長CEOに就任。しかし、振り返ってみると、就任以降はこれ以上ないとも言える的確な施策を実施してきた。戦略の最終ジャッジはどうしてきた?
澤田宏太郎社長兼CEO(以下、澤田):僕はロジカルに考え抜いて結論を出す左脳派です。業績に関するアナリストレポートや新聞記事はあまり見ないようにする一方で、結論を出す過程ではあえて社内外のアイデアマンやクリエイティブチームといった右脳派の人たちの話を参考にしています。その一つが2週間に1度くらいの頻度で実施している、当社のデザイン本部とのミーティング。「ゾゾタウン」のUI/UXに加え、サービスやビジネスアイデアなんかも出す部署で、彼ら/彼女たちとの話にインスピレーションをもらうことは多いです。
WWD:前澤氏というカリスマの退場後、求心力はどう高めた?
澤田:求心力を高めるということではないですが、最近当社がフルリモートに移行したこともあって、私がディスクジョッキーを務める社内ラジオを始めました。これもデザイン本部との会議で出たアイデアがベースになっています。週1回、30分ほど、社内で募ったハガキのような投書を募ってそれを読んだり、TV番組の「テレフォンショッキング」的な感じで社員をゲストに迎えて話したりしています。
WWD:投書はどんな内容?
澤田:「最近リモートになってやる気が出ません、どうすればいいでしょう」とか「(澤田社長の)好きな食べ物はなんですか」とかですね(笑)。でもそれでいい。社内ラジオの狙いは、社員と肩肘張らないコミュニケーションを取るのが目的なので。とはいえ、個人的にはリモートは組織がさらにフラットになって、かなりプラスだったと思っていますが(笑)。社内ラジオでは、目立たないサイトの改修や地道な取り組みについても触れることで、会社はきちんとそういったことも見ているよ、と伝える機会にもなっています。
WWD:4月27日の決算発表では、鳴り物入りで導入した「ZOZOコスメ」の22年3月期の売り上げについては非開示。これまで前澤時代にはプライベートブランド(PB)などの新サービス導入時でも、積極的に情報を公開していたので意外だった。
澤田:最終的には4桁億円を狙えると思っています。ただ現時点では、そこまでのイメージはまだない。なので、いま数字はあえて非開示にしています。まずは3桁億円をマイルストーンと定め、そこにどう持っていくか。
WWD:ほとんどのアパレル企業にとって「ZOZO支店」は圧倒的なナンバーワン店舗。ビューティ企業にも大きなインパクトがありそうと予想していたが、実際にはそこまでの立ち上がりではなかった?
澤田:立ち上げ時にはテレビCMなどの大型のプロモーションもかけたし、「ZOZOグラス」というユニークで強力なツールも開発した。ビューティ企業には、僕らの本気度は充分に伝わっている手応えはあります。今後もプロモーションには力を入れますし、あとは実績です。ただ、ユーザーへの認知はまだまだです。
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