5月末までの緊急事態宣言の延長を受け、12日から百貨店各社の休業も“延長戦”に入る。東京都と大阪府が商業施設への休業要請の継続を決定。高島屋が同日から都内4店舗の営業範囲を大きく拡大し、衣料品やラグジュアリーブランドなどの売り場を再開すると発表しているが、他社に追従する動きは見られない。5月末までの休業となれば、取引先を含めて経営への打撃は一層深刻になる。各社は難しい舵取りを迫られている。
阪急阪神百貨店は大阪府の定める「生活必需品」のガイドラインに沿い、大阪にある店舗については、食料品と化粧品以外のフロアを12日以降も休業継続する。11日に配信形式で行われた親会社のエイチ・ツー・オー リテイリングの21年3月期決算会見で、荒木直也社長は「大阪の医療のひっ迫状況を考えれば、(休業継続は)やむを得ない状況」と語った。
ただ5月末まで休業が継続すれば、基幹2店(阪急うめだ本店、阪神梅田本店)を1カ月以上も店を閉めることになり、「業績へのダメージは昨年4〜5月の緊急事態宣言時と同等になる」(山口俊比古・阪急阪神百貨店社長)と予想する。同社は当初、この会見で新中期経営計画の発表を見込んでいたが、足元のダメージを受け、22年3月期の業績予想の発表とともに見送った。「(休業要請対象の)ガイドラインの見直しも含めて、今後何らかの形で行政に働き掛けることを検討したい」(荒木社長)。
一方で東京都は「生活必需品」のガイドラインを明確に定めておらず、休業する売り場の範囲は百貨店各社に委ねられている。三越伊勢丹は都内4店(伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店、三越銀座店、伊勢丹立川店)の、婦人・紳士の服飾雑貨(傘や帽子、ハンカチなど)、靴、バッグ、リビングカテゴリーの12日再開を決めた。「要望の特に多かったリビング用品や、気候の変化に伴い必要になる身の回り品を優先した。あらゆる商品ジャンルで再開の準備は進めており、お客さまの声に耳を傾けながら柔軟に対応する」(同社広報)。
そごう・西武は西武池袋本店、西武渋谷店で現状の営業体制(食料品、化粧品、一部の専門店以外を休業)を13日まで続け、それ以降の営業範囲の見直しを検討している。同様に食料品、化粧品を営業する大丸松坂屋百貨店は12日から、大丸東京店、松坂屋上野店のレストランなど一部の売り場を再開。大阪の3店舗(大丸心斎橋店、大丸梅田店、松坂屋高槻店)は現状の営業体制を維持する。