4月22日の“アースデー”は、地球環境について考える日として1970年にアメリカで誕生したグローバルキャンペーンだ。日本ではアースデー東京事務局が主体となり、環境活動団体によるイベントが90年以降各地で開催されてきた。
今年はメインテーマの一つがファッションだった。アースデー東京事務局は、ファッション産業の透明性を推進するファッションレボリューション(FASHION REVOLUTION、以下FR)の日本支部であるFRジャパンと初めて連携し「サスティナブルファッションウィーク2020+1」を4月24、25日に東京・渋谷の宮下パークで開催した。有識者やクリエイターらを招いたトークセッションを実施したほか、会場の宮下パークの屋上には、アシックスジャパンや三井物産アイ・ファッションのニットブランド「アニュアル(ANNUAL)」、一般社団法人日本オーガニックコスメ協会など計11企業が出店した。
FRジャパンを運営する一般社団法人ユニステップスの鎌田安里紗と竹村伊央に、同イベントを通して見えてきた企業の課題や“アースデー”との向き合い方について聞いた。
サステナビリティを自分の言葉で語れるか
WWD:アースデー東京と連携した意図は?
鎌田:アースデー東京の運営事務局から今年はファッションの話題をきちんと取り扱いたいと相談がありました。特に環境問題に意識が高い層は、ファッション産業の問題に対する関心が高いそうです。
竹村:SNSを軸に活動するFRは、若い層へのアピールが得意です。一方でアースデー東京は環境活動団体とのつながりが強い。それぞれ異なる層にリーチできるメリットもありました。
WWD:3日間に渡って実施したトークセッションでは、アシックスジャパン、豊島、レンチングファイバーズジャパン、日本環境設計といった企業から、高橋悠介「CFCL」クリエイティブディレクターや中里唯馬「ユイマ ナカザト(YUIMA NAKAZATO)」デザイナーらも登壇し、多岐にわたるトピックが語られた。全体を通してキーワードとなったことは?
鎌田:「サステナビリティを自分の言葉で語れるか」です。各セッションの登壇者は、定量化、透明性、オートクチュールの一般化など、それぞれの軸について語ってくれました。“サステナブル”や“SDGs”を免罪符のように使わず、「サステナブルファッションとは何か?」という問いに対しての多様な“解”を見せることを意識しました。
WWD:特に反響が高かったコンテンツは?
鎌田:日本環境設計の岩元会長とデプトカンパニーのエリさんによるファッションロスゼロをテーマにしたセッションには、「リサイクルの捉え方が変わってワクワクした」という感想が寄せられました。サステナビリティを可能性や面白いものとして捉えてくれた視聴者が多くうれしかったです。例年のFRのイベント参加者は300人前後ですが、今年は1000人以上が来場し、オンラインコンテンツは1万回以上再生されました。
WWD:FRではこれまで環境先進企業に焦点を絞っていた印象だが、今回はさまざまなレベルの取り組みが紹介されていた。
鎌田:批判的な視点だけでなく、具体的な変化を起こすために企業の規模や立場によってできること、取り組みのスピードに違いがあることをきちんと理解したいと思ったからです。“サステナビリティ”が業界全体のトピックになった今、FRでは産業の問題点を指摘する啓蒙的なフェーズから、企業同士の“連携”を意識したフェーズに移行しています。ただ、トークセッションではFRが毎年テーマにしている人権の話題が少なかったことは反省点です。日本で“サステナブルファッション”というと、環境の話題が中心ですが、人権も非常に重要なトピックです。サプライチェーンの環境負荷について把握し、工場の労働環境などについても知る努力をしてほしいということはきちんと伝えていきたい。
WWD:企業の“小さな一歩”を応援することも大切だが、取り組みのスピードをどう加速させる?
竹村:消費者と企業のコミュニケーションの場をいかに創出できるかが鍵になると思います。今回ブースに出店した企業からは、環境問題に関心が高い来場者から質問を受ける経験がとても楽しかったという反響がありました。
鎌田:特に大手企業には、サステナブルな商品を求めている生活者がいることがまだ伝わっていない気がします。安くてトレンドのモノを求める消費者像とは異なり、環境や労働環境に対する意識が高く、情報を切実に求めている生活者の存在がいることを認識しほしい。生活者側からも意志を伝える必要がありますね。
“アースデー”を情報開示のきっかけに
WWD:企業に“アースデー”とどう向き合ってほしい?
鎌田:オールバーズ(ALLBIRDS)は“アースデー”に合わせてカーボンフットプリント(CO2e・温室効果ガス)を算出できるライフサイクルアセスメント(LCA)ツールをオープンソース化しました。このようなモノを売らない施策も、他と差別化できるという意味でも価値があると思います。
竹村:毎年開催されることを生かして、取り組みのアップデートを発表する場にしてほしいです。FRのイベントに毎年参加してくれているレンチングは「来年は何を言えるようにしよう?」と考え、努力を継続してくれています。
鎌田:取り組みの発表と同時に、これからの課題も公表することが大切です。自分たちの思想や現状を生活者とシェアしてみんなで考える場を作る。そうすることで信頼が生まれ、将来の顧客獲得にもつながると思います。私たちはFRのイベントをきっかけに企業と生活者、企業同士がつながり、それが継続して大きな変化になることを望んでいます。