ビジネス

「ルイ・ヴィトン」親会社が透明性の向上やエコデザインの目標を設定 中古品の取り扱いはせず

 「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」などのブランドを運営するLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)が、環境問題プログラム「ライフ360」の一環として目標を発表した。

 2026年までに包装で使用するプラスチックを全てリサイクルされたものにし、消費者に情報を開示するシステムの構築を掲げた。また、製造工程をたどるトレーサビリティー(追跡可能性)の追求を含め、透明性の向上を図る。エレーヌ・ヴァラド(Helene Valade)環境開発ディレクターはトレーサビリティーを「“畑から店舗まで”のバリューチェーン全体を見直す重要な指標」と定義。同じく26年までに再生可能エネルギーの使用を増やし、480万トンと換算されている二酸化炭素排出量を19年と比較して50%削減する。製造や輸送、通勤などで排出される二酸化炭素量を指すスコープ3を半分に削減する。

 30年までの目標としては、取引情報を安全に記録する手段として用いられるブロックチェーンなどを活用して、主要な素材の種類別に追跡可能なシステムを設けることをあげた。同グループのビューティブランドである「ゲラン(GUERLAIN)」が開発したデジタル追跡システム「ビー・リスペクト(BEE RESPECT)」や、「パトゥ(PATOU)」が導入したQRコードを使ったシステムを例にあげた。

 ほかにも、環境負担の少ない製品の提供やエコデザイン、循環型経済の導入などに重点を置く。ヴァラド環境開発ディレクターは「エコデザインの分野にはまだ多くの改善点がある」とし、2030年までに全ての新製品にエコデザインを適用すると発表。循環型経済の導入ではまず商品開発のプロセスを再考し、リサイクル素材の使用や再生農業から得られる材料の使用など、素材の選択から見直していくと強調した。製品の修理やブラッシュアップサービス、レザーやファーなどの材料のリメイク(アップサイクル)やリサイクルを開始する予定だ。

 同氏は「わたしを知っている人なら、わたしが循環型経済について専門家並みに知識を持っていることを知っているだろう。この新しい経済モデルによって何かが変わると強く信じている。LVMHではこれを具体的に適用していく。消費者とわれわれの双方によって、製品に“第2の人生”を与えられる仕組みを作る」と述べた。LVMHがセカンドハンドの分野に本格的に着手するかどうか尋ねられた際には、「われわれが目指すのはセカンドハンドの取り扱いではない。まずは製品を長持ちさせることに重きを置いている」と返答した。

 古着や廃棄物をデザインの力でよみがえらせ、新たな価値を生み出すことで知られる“アップサイクル”の動きは、LVMH傘下ブランドの数々で既に見られている。「ルイ・ヴィトン」の2021年春夏コレクションでヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)=メンズ アーティスティック・ディレクターは“アップサイクル スニーカー”をデザイン。「ロエベ(LOEWE)」は、廃棄予定だったレザーを集めてハンドバッグを作成した。「これらは、時間や自然との新しい関係から生まれたもの。われわれが目指すよりクリーンなラグジュアリーの形だ」とヴァラド環境開発ディレクター。

 加えて新型コロナのパンデミックでファッションショーの開催方法に変化があったことを受けて、「デジタル開催でも環境に影響を与えるということが明確になった。環境負担が少ないと想定されていたデジタル開催でも十分な影響を持つことがわかったので、これらの結果をリアルでの開催の時と厳密に比較しなければいけない。われわれはファッションウイークに対して、開催する地域の経済、文化、環境への影響を考慮しながらアプローチしている」とコメント。地域の経済状況への貢献やファッションエコシステムを視野に入れる必要性と、若手デザイナーが輝く場所としてのファッションウイークの意義を強調した。

 LVMHによる「ライフ」プログラムシリーズは、2012年にスタート。傘下ブランドも含めて、サステナビリティへのパフォーマンスの向上にアプローチした。2016年には「ライフ2020」プロジェクトを発足。「製品」「サプライチェーン」「CO2」「製造拠点」の4つの分野でそれぞれ目標を設定し、環境問題へのコミットメントを強化した。プログラムを通じてグループ内の再生可能エネルギーの使用量は40%増えた。シャンパンブランド「ルイナール(RUINART)」が実施した包装の見直しなどが功をなし、店舗でのエネルギー消費は31%削減した。グループが使用するダイヤモンドやゴールドの調達も、RJC(RESPONSIBLE JEWELLERY COUNSIL、責任あるジュエリー協議会)に認定されている。

 今回設定した目標は、3、6、10年という長期的かつ複数の展望を持つ。その理由にヴァラド環境開発ディレクターは、「特定の期間で幅広い課題を網羅するには、多様なチェックポイントを持つことが重要だ」と説いた。

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

2025年春夏ウィメンズリアルトレンド特集 もっと軽やかに、華やかに【WWDJAPAN BEAUTY付録:2024年下半期ベストコスメ発表】

百貨店、ファッションビルブランド、セレクトショップの2025年春夏の打ち出しが出そろった。ここ数年はベーシック回帰の流れが強かった国内リアルクローズ市場は、海外ランウエイを席巻した「ボーホー×ロマンチック」なムードに呼応し、今季は一気に華やかさを取り戻しそうな気配です。ただ、例年ますます厳しさを増す夏の暑さの中で、商品企画やMDの見直しも急務となっています。

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。