週末にかけて都内の百貨店やショッピンセンター(SC)の営業再開が相次いでいる。既報の通り14日にそごう・西武、15日に三越伊勢丹の各店が衣料品を含めた大部分の売り場の営業を再開。同じく15日に松屋銀座店、東急百貨店吉祥寺店と渋谷ヒカリエ・シンクス、ギンザシックスが続き、16日から大丸東京店、松坂屋上野店、17日から小田急百貨店新宿店が大部分の営業再開に踏み切る。ただ、東京都の小池百合子知事は14日午後の会見で「高級衣料品は生活必需品に当たらない」と営業拡大の動きを牽制しており、対立する構図になっている。
売上高日本一を誇る伊勢丹新宿本店はきょう15日、営業フロアを大幅に拡大した。売り場の大部分を占める衣料品も含まれており、実質的な営業再開になる。しかしショーウインドーのシャッターは下ろしたままで、新宿通り沿いの正面玄関も閉じている。掲示板やデジタルサイネージも「臨時休業」を前面に出したままだ。あくまで都の休業要請から除外される「生活必需品」の範疇を広げたという体裁をとる。
20日ぶりに衣料品フロアを再開した同店だが、積極的な告知を行なっていないせいか、正午付近では客の数はそれほど多くなかった。杉並区から来た30代の女性は衣料品売り場の再開を知らずに、たまたま立ち寄ったという。「身長が高いので、合うサイズの服がたくさんそろう百貨店はよく利用する。私には必要なお店」と話す。メンズ館の販売員は「売り場を再開するかもしれないと連絡を受けたのが水曜日(12日)。もっと先になると思っていたのでホッとした」と語った。
緊急事態宣言の延長に伴い、東京都は12日以降も百貨店やSCに対する休業要請の継続を発表した。高島屋だけが12日から衣料品を含めた大部分の売り場を再開する独自路線をとり、他の百貨店は食品、化粧品、服飾雑貨など一部の営業に留まっていた。三越伊勢丹ホールディングスは12日の決算説明会で、4月25日から始まった休業が5月末まで続いた場合に消失する売上高が290億円の達するという試算を発表していた。休業の長期化は1年以上続くコロナ禍で足腰が弱る百貨店や取引先の死活問題に発展する。
だが、ある百貨店の関係者は今後の感染状況や都の動きを警戒する。「東京都が強硬に出てくれば再び事態は変わるかもしれない。取引先とともに、あらゆる可能性をシミュレーションして対応していくしかない」と苦しい胸のうちを明かす。