縫製大手のマツオカコーポレーションの21年3月期決算は売上高が前期比5.6%減の539億円、営業利益が同75.3%増の45億円、経常利益が同61.4%増の40億円、純利益が同135.1%増の27億円だった。上期にマスクだけで63億円を計上、「増益分の大半はマスクによるもの」(佐藤仁取締役)という。
マスクを除く、アパレル製品の生産枚数は5000万枚で、前期の5800万枚からは減少した。地域別の売上高はマスク生産を行った中国が同0.5%減の306億円にとどまったものの、バングラデシュが同21.0%減の108億円になった。コロナ禍の影響が比較的小さかったベトナムは同0.8%増の772億円、新工場を開設したインドネシアは同63.9%増の158億円だった。
22年3月期はマスク特需がなくなり、「アパレル市場の回復は来期以降」(佐藤取締役)となるものの、シェア拡大を優先し、東南アジアでは今期以降も積極的な生産能力の拡大に動く。今期の22年3月期の業績は売上高が前期比0.1%増の540億円、営業利益が同67.1%減の15億円、経常利益が同65.6%減の14億円、純利益が同63.8%減の10億円を見込む。
ベトナムとバングラデシュでは新工場の建設と既存工場の増設を行うほか、ベトナムには新たに百貨店や専門店をターゲットにした小ロットQR対応の新タイプの工場建設も行う。2工場を持つミャンマーが政情不安に伴うカントリーリスクが増大する中、ベトナムとバングラデシュの能力拡大でカバーする考え。
広島県福山市に本社を持つ同社は、日本の縫製企業の最大手。日本を中心としたアパレル需要について「足元の市況は前年に比べて徐々に回復しているものの、景気の悪化も顕在化しつつあり、それ以上に価格の値下げ圧力が強くなりそうで、縫製企業にとっては今年度が正念場。苦しいが、グローバルで存在感を高めるためにも投資は継続する」(佐藤取締役)。縫製能力を世界規模で高める一方、素材メーカーとの連携も強化する。より上流の企画段階から加わることでODM事業を進化させる。