特別なのに日常、身近なのに憧れ
先週お伝えした通り、5月24日発売のWWDJAPANの特集、車いすのファッション・ジャーナリストの徳永啓太さんと考える「1%から見るファッション」の制作は大詰めを迎えております。佳境!!「ザ・佳境」です。
こちらもすでにお伝えした通り、ネタの1つは、5月30日にYouTubeで公開されるダイバーシティ・ファッションショー。身体に障がいがあるモデルと、ブランドや企業がタッグを組み、11のチームがランウエイを歩く様子を公開しながら、インタビューで制作プロセスを明らかにするデジタル・ファッションショーです。総合プロデューサーは落合陽一さんですが、徳永さんと私たちが話を聞いたのは、金森香さん。前述のファッションショーを含むダイバーシティー芸術祭のディレクターを務めるほか、バリアフリー型の動画配信プラットフォーム「THEATRE for ALL」ではプロジェクトディレクターを担当。「ここのがっこう」出身のデザイナーが6組のモデルとタッグを組んで、多様な身体に対応する多様なファッションを生み出すまでの過程を追ったドキュメンタリーなどを手がけています。プロデューサーとして「シアタープロダクツ」を立ち上げる前は、身体芸術やパフォーミングアーツを学んでいたという金森さん。「なるほど、だから身体の多様性に興味があるのね」と納得したワケですが、どうして金森さんは、演劇やダンスではなく、ファッションを通して身体芸術やパフォーミングアーツに迫るのでしょう?そう聞くと金森さんは、「演劇のように劇場がなくても、ファッションでは人間が一人いれば表現できる。日常の中に入れるのがファッション。ファッションには、人を生活から変える魅力があります」と言うのです。
実は取材の直前、このダイバーシティー・ファッションショーのPRもメールで、金森さんに似たような思いを教えてくれました。彼女は、「ファッションは無差別に誰もが見て、“自分ごと化”するもの。だから多様性のメッセージが受け取ってもらいやすいのでは?全ての人は歌ったり、踊ったり、演技をしたりはしないけれど、洋服には毎日向き合う。一番身近に考えやすい“演目”だと感じています」と言います。なるほど。ファッションは、特別になり得るのに日常で、身近なのに憧れの存在なのか。不思議なものですね。
そこで、ビューティも全く同じだと気づきました。数年前、コスメバイヤーの友人に「(ファッションに比べ)どうしてコスメは元気だと思う?」と聞いたら、「究極、消耗する日用品だからじゃない?でも、使えば気分がアガるもの」と教えてくれました。これまた特別なのに日常、身近なのに憧れです。
そう考えると、小池百合子都知事の「高級衣料品は、生活必需品に当たらない」というコメントは、合っているのかな?なんて考えてしまいます。
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