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自社EC会員1200万人のアダストリアが「情緒的な」OMO店舗を出店 撮影スタジオも併設

 アダストリアは5月19日、千葉・船橋のららぽーとTOKYO-BAY北館2階に、自社ECモール「ドットエスティ(.ST)」と連動したOMO(オンラインとオフラインの融合)店舗「ドットエスティストア」の1号店をオープンした。28日には、東京・府中の伊勢丹府中店跡地にオープンする商業施設、ミッテン府中にも出店する。「ドットエスティ」は会員数が約1200万人となり、アパレル各社の中でもアダストリアはECの勝ち組企業の一つと目されるケースが多い。そんなアダストリアが仕掛ける初のOMO店舗は、EC上での人気ランキングを生かした商品提案や客の行動データ収集などを取り入れつつも、その中心には客と販売員とのコミュニケーションを据えている。

 1号店は売り場面積約709平方メートル。ウィメンズ、メンズ、キッズで大きくコーナーを分け、それぞれの壁面に「グローバルワーク(GLOBAL WORK)」「ニコアンド(NIKO AND…)」「ハレ(HARE)」などの同社の25超のブランドを1ラックずつ陳列している。各ブランドとも、ECで売り上げ上位のアイテムを中心に商品を選んでいる。

 売り場の真ん中には大型モニター一体型の什器が置かれ、「ドットエスティ」上の販売員のスナップサイト“スタッフボード”で支持率の高い販売員の着こなしをモニターに表示。モニター横には、その着こなしに使われているアイテムが並ぶ。2週間前後で取り上げる着こなしや販売員は変えていくという。取り上げる販売員は立地特性も考慮して選出する。ららぽーとTOKYO-BAYは30〜40代のファミリー層が中心客層ということもあり、秋田の店舗に勤める30代の販売員などを表示していた。

「データはあくまで手段」

 店舗入り口には、「ドットエスティ」の会員バーコードを読み取るスキャナーを設置。来店ポイントの提供でスキャンを促し、来店した客が商品を買ったか買わなかったか、買わなかった場合も後にECで買ったか、またはららぽーとTOKYO-BAY内のアダストリアの他店舗で買ったかといった行動を追っていく。そうしたデータはECのパーソナライズに生かす。また、店内2カ所に設置したミラーサイネージに商品タグのバーコードをかざすと、そこからECに飛んで“スタッフボード”なども確認が可能だ。ミラーサイネージに会員バーコードをかざせば、個人の購入履歴も表示される。

 OMO店舗として、このようにデータを活用する施策は多い。ただし、同事業を率いる田中順一執行役員マーケティング本部長兼広告宣伝部長は「データはあくまで手段」と強調する。「ミラーサイネージもOMO店舗としてそれを導入すること自体が本質なのではなく、サイネージに表示される購入履歴などを販売員とお客さまが会話をするきっかけとしてほしい。OMO店舗というとすぐにショールーミングストアといった発想に結びつきがちだが、ここはそうではない。無機質で機械的なイメージのショールーミングストアとは逆の、情緒的な価値を提案していく」という。その背景には、「コロナ禍による休業期間中に販売員の重要性に改めて気づいた。スナップ発信やライブ配信ができるのは、彼らがいるからこそ」という考え方がある。

 この店舗の大きな特徴はもう一つある。それは店内奥の試着室横に、広いスタジオ機能を備えていること。専用の照明を置いてきれいに撮影ができるようにしており、販売員のスナップ撮影やライブ配信をここで行っていく。館内に14あるアダストリアの他業態の販売員もここで撮影が可能。「販売員からの評判は非常にいい」という。「今は(店頭だけでなく)デジタルがお客さまとの接点になっているからこそ、販売員がきれいな写真や動画を撮りやすいように、会社は仕組みを整えるべき」と考えている。今後出店する「ドットエスティストア」全てにスタジオを備えるわけではないが、条件によっては検討していくという。

 EC購入商品の店頭受け取りにももちろん対応するほか、「ドットエスティ」アプリからの試着予約も可能。また、対応する販売員を指定した来店予約サービスも実施する。事前に来店目的などをウェブフォーム上(「ドットエスティ」アプリとは別)で伝えておけば、同店にない商品も取り寄せて接客する仕組み。同様のサービスは「アパートバイローリーズ(APART BY LOWRYS)」「バビロン(BABYLONE)」の一部店舗でも実施しているが、テストを重ねた上で、今後他店舗展開や自社アプリとの紐づけなども検討していくという。

 ららぽーとTOKYO-BAY南館1階には、オンワード樫山も4月にOMO店舗の「オンワード・クローゼット・ストア(ONWARD CROSSET STORE)」3号店をオープンしている。

 

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