東レの日覚昭廣社長は、「ワクチンの摂取が進み、コロナ禍は年内を目途に収束に向かう。2022年には世界経済はコロナ前の水準にまで戻すだろう」との見方を示した。昨年5月に発表した中期経営計画では2023年3月期に売上収益2兆6000億円、事業利益1800億円を掲げているが、「変更はない。むしろ22年3月期の期中に、上方修正の可能性すら期待している」という。都内で25日に開催した記者会見で明らかにした。
2022年3月期(国際会計基準)の見通しは、売上収益が前期比17.4%増の2兆1200億円、事業利益は同32.9%増の1200億円、純利益は同74.7%増の800億円。「中計の数字達成のカギを握るのは繊維部門と炭素繊維部門」と日覚社長。ボーイングなどの大手航空機の主要部材である炭素繊維は、コロナ禍で大打撃を受け、低迷しているが、風力発電のブレードなどで需要が拡大しているという。繊維では、米国の大手アパレルからの足元の受注はコロナ前の水準に戻っているという。繊維事業のトップである三木憲一郎常務執行役員は、「地域やアイテムによって差はあるが、全般的に今年1年をかけてコロナ前の水準にまで戻っていくだろう」という。
22年3月期の繊維部門の売上高は前期比13.4%増の8150億円、事業利益が同50.3%増の550億円の見通し。23年3月期の繊維事業は売上収益が1兆300億円、事業収益が760億円を計画しており、売上高と営業利益は過去最高だった19年3月期の(売上高9743億円、営業利益729億円)を、それぞれ上回る計画になる。
繊維の拡大の柱になるのが、リサイクルポリエステル「アンドプラス」などを柱としたサステナブル素材。「すでに縫い糸などではかなりの量を供給しており、グローバルに拡大できる余地がある。トレーサビリティー(追跡可能性)などがますます求められる中でも、こうしたリサイクルポリエステルや、植物由来のバイオポリエステルの開発を強化する。原料分野でのこうした差別化が、トレーサビリティーにもつながる」という。
一方、ウイグル問題などを始め、人権と政治の問題が経済にどう影響を与えるかという質問に対し、日覚社長は「我々としても非常に注視している。人権問題などは最終的には話し合って解決していくことになるだろう。ただ、米中間の貿易額を見ても、実際には伸びている。中国が現在も生産大国であることは現実で、一方米国も市場としての中国を注目している。大きな流れで見ると、マイナスにはならない」という見方を示した。
新疆綿の調達に関しては、三木常務執行役員が「当社は合繊メーカーなので綿を使った製品を製造する場合は、綿花は購入しているが、原材料の調達はCSR調達基準に則って行っている」と語るにとどまった。