社会ではさまざまな人種や性別を認める動きがあり、ファッションも例外ではない。ここでは、身体機能を拡張するファッションやテクノロジーを通じて、多様な身体像を表現するプロジェクト“トゥルー カラーズ ファッション”に参加した「ハトラ(HATRA)」「コトハヨコザワ(KOTOHAYOKOZAWA)」の2ブランドを取材した。(この記事はWWDジャパン2021年5月24日号からの抜粋に加筆しています)
「ハトラ」は当事者が意見を言える“未来のたたき台”となったトレンチ
長見佳祐デザイナーが手掛ける「ハトラ」は、骨肉腫のために“片腕のない人が着る服”を考えて、左右非対称という共通項を持つトレンチコートをデザインした。「誰でも着られる服では、本当に届けたい人に対してのデザインが欠けてしまう」と考え、まずはモデルが一番着やすく、そして美しい佇まいになるよう仕上げたという。「片腕がない」といっても、状況は一人ひとり異なる。このコートは「答え」ではなく「スタート」となるように、ボタンやファスナーは数種類採用し、1着の中にさまざまな機能性を盛り込んだ。長見デザイナーは、このトレンチに触れることで「いろんな境遇の当事者が意見を言えるようになり、ファッションの多様性がさらに発展するための“未来の叩き台”になる」ことを望んでいる。
モデルを務めた倉澤奈津子さんは「ハトラ」のトレンチコートに出会い、「片腕がないものとして、これまではざっくりとしか欲しい服が言えなかったけれど、どんな機能があれば嬉しいか人に説明できるようになった」と喜んでいた。ご自身が運営するNPO法人Mission ARM Japanの同じ境遇の人にも着てもらい、意見交換したいと希望していた。デザイナー長見佳祐さんとの打ち合わせでは、「多少着にくくても、胸を張って外に出られるアイテムが欲しい」とリクエストしたそう。ファッションとは利便性だけではなく、前向きに生活できるような、心を動かす力がある。
「コトハヨコザワ」は「ファッションで障がいを特別視しない関係性」
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