政府は28日夜、9都府県の緊急事態宣言を6月20日まで再延長すると発表した。ただ、各自治体による商業施設への休業要請は緩和に向かう。最も厳しい休業要請が出されていた大阪府の百貨店やショッピングセンター(SC)は、6月1日以降は営業エリアを衣料品などにも拡大し、平日は実質的に38日ぶりの営業再開になる見通しだ。
大阪府は、百貨店やSCなど大型商業施設への休業要請を緩和し、土日は休業要請を出すが、平日は時短営業を認める。これまで独自に敷いてきた休業要請の緩和に動く。
緊急事態宣言が発令された4月25日以降、大阪の百貨店は府が定める「生活必需品」のガイドラインに従い、食品および化粧品、一部の生活雑貨(雨傘やハンカチなど)を除く大部分の売り場の休業を強いられてきた。今回の緩和を受けて阪急阪神百貨店、高島屋、大丸松坂屋百貨店が、それぞれ営業範囲拡大に向け準備を進める。38日ぶりに全館営業再開が見込まれるものの、各社の受け止めは慎重だ。
阪急阪神百貨店は、2つの基幹店(阪急うめだ本店、阪神梅田本店)がほぼ全館営業再開となる見通し。だが、「東京の感染者を一時上回ったり、変異株が拡大したりといったことにより大阪が負った傷跡は深い。消費マインドは相当冷え込んでいるのではないか」(同社広報)との声がこぼれる。
東京では他社に先立って5月12日に4店舗(日本橋高島屋S.C.、タカシマヤタイムズスクエア、玉川高島屋S・C、立川高島屋S.C.)の衣料品などの営業再開に踏み切った高島屋も、「東京ではお客さまから大きな反響をいただいたが、大阪でもそうかは分からない」(同社広報)との見方だ。
大丸心斎橋店と大丸梅田店を持つ大丸松坂屋百貨店は「(営業再開による)リバウンド消費を見込みつつ、一方で(感染状況が)もっと悪くなるということも想定にある」と慎重姿勢を崩さない。
一方、ファッションの個店が軒を並べる大阪・心斎橋地区では、百貨店などの再開による波及効果を期待する声もある。同地区のある高級セレクトショップは、入店制限などの感染対策を講じながら、緊急事態宣言下でも営業を続けてきた。顧客売り上げが下支えするものの、宣言発令以降は新規客が激減した。同店のショップマネージャーは「大丸(心斎橋店)やパルコの営業中は、そこから流れてくる方が新規客になるなどの恩恵を受けていた。(商業施設の営業再開は)この一帯のショップにとってもうれしいのではないか」と口にする。