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メディアが担うサステナブルな社会作りとは? 生駒芳子×関龍彦スペシャル対談

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 近年はサステナブルという言葉があふれ、個々人がそれに伴った行動に移す必要があると理解しながらもどこか拒否反応さえ生まれつつある。これら情報を発信するメディアは真実を伝えつつ受け手が理解しやすく生活に取り入れやすくするための努力が必要だ。環境問題にもいち早く取り組んだ女性誌に長く携わり、一家言を持つ生駒芳子ファッションジャーナリスト・「ヒルメ(HIRUME)」プロデューサーと関龍彦「フラウ(FRAU)」編集長兼プロデューサーにこれまでの取り組みと今後のメディアが果たす役割を語ってもらった。(この記事はWWDジャパン2021年5月31日号からの抜粋に加筆しています)

WWDJAPAN(以下、WWD):お二人はメディアの中でもいち早く、サステナビリティやSDGs、エシカルを打ち出されてきたが、きっかけは?

生駒芳子ファッションジャーナリスト、「ヒルメ」プロデューサー(以下、生駒):「ヴォーグ(VOGUE)」「エル(ELLE)」「マリ・クレール(MARIE CLAIRE)」と長年女性誌に携わり、ファッショントレンドを取材して紹介するのがミッションだと思って走ってきた。ファッションは時代を写す鏡、そして時代を変えて行くパワーと信じ、ファッションと時代の関わりに注目して取材をした。その一方、2000年ごろからそれ以前に比べてミラノやパリのコレクション取材の際、分厚いコートやブーツが必要なくなったことから地球温暖化を肌で感じるように。当時は環境問題を広く語られることはなかったが、1992年のリオ環境サミットでの、12歳のセヴァン・スズキ(Severn Cullis-Suzuki)による地球環境の危機を訴えるスピーチが記憶に残っており、自分の中でザワザワと胸騒ぎがした。そして、これからは地球温暖化がどうファッションに影響を与えるかに注目したいとの気持ちが芽生えた。2004年からパリでエシカルファッションショーが開かれたり、ロンドンでもそれらを集積した展示会「エステティカ(ESTETICA)」が開催されたり、「ステラ・マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」がエシカルファッションの扉を開いたものの、まだまだモードとエシカルの間には溝が深かった。私の中で最も表現できたのは、2004〜08年の「マリ・クレール」編集長時代。07年に「プラネット・キャンペーン~地球規模で考えよう!~」を行い、地球環境問題に目を向けることを促した。同じ時期にアル・ゴア(Al Gore)元アメリカ副大統領が手掛けた「不都合な真実」が公開され、それ以降の「マリ・クレール」は読み物ページの大半が環境問題や社会貢献に関する構成となり、私は“プラダを着た悪魔”ならぬ“エシカルを着た悪魔”などと呼ばれるようになった(笑)。

関龍彦「フラウ」編集長兼プロデューサー(以下、関):私も1987年に講談社に入社してからずっと「ヴィヴィ(ViVi)」「ヴォーチェ(VOCE)」など女性誌だけに携わっている。2017年に「フラウ」の編集長兼プロデューサーに就任した頃から、ビューティやファッション、エンターテインメントも好きだが、環境や社会に対してプラスになるようなテーマができないかと考えていた。その中でSDGsという言葉に出合ったが、マッチョに「さぁ、みんなやらなきゃダメ!」「やらないと地球がダメになる!」としては、「フラウ」のライフスタイルを楽しくするという提案からズレる。そして苦労しながらSDGsを「フラウ」らしい表現で一冊にしたのが18年12月に刊行した“SDGs特集号”だ。ほかの女性誌での一部特集やデジタル配信ではなく、紙媒体で一冊丸ごとやったことでインパクトがあったと思うし、話題にもなったと思う。

生駒:綾瀬はるかさんが表紙でしたよね。あれは、すごく印象に残っているな。

関:刊行後、「あの時から潮目が変わった」とよく言われる。当時からSDGsを意識している人はいたが、どう伝えればいいのかわからなかったのだろう。女性誌の手法で表現したことで、みんなが語り合えるようになったと感じていただいているようだ。それから毎年数冊のSDGs号を刊行しているが、紙媒体としては珍しくタイアップ記事も年々増えて分厚くなっている。しかも、生活に直結する大手企業が入ることで、一部の会社がやっていることではないと読者に伝わる。もちろん広告収入が増えるのはありがたいが、クライアントというよりパートナーが増えている感覚だ。コロナ禍の前は、出稿して頂いた皆さまに、発売日に弊社に集まっていただいてパーティー?を催していた。そこで横の繋がりができていくのを見て、こういう場が作れて本当に良かったと思った。

生駒:必要な情報をおしゃれにバランスよく伝えられているのは関さんの力。今、やっていることの価値って時間を経ないとわからないことってある。1962年に上梓されたレイチェル・カーソン(Rachel Louise Carson)の「沈黙の春」は化学物質の危険性について書かれた本だが、当時は産業界から大バッシングされたと聞く。それが、今となってはバイブルとなっている。もちろん「フラウ」はバッシングされていないが、本当の価値はもっと深く、大きくあってそれは時間が経ってからわかると思う。

雑誌が読者の行動変容を促すーー関龍彦

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